2月は海外取材に行ってました
海外取材期間中は、現地でその記事を書くことになるため、連載記事をこなすことができなくなります。
なので、海外取材期間分の連載を書きためます。で、帰国後、すぐに連載サイクルに戻れるかというと、そうもいかない場合が多く、海外取材滞在中に書ききれなかったネタを帰国後も書かなければならず、これが、忙しさに拍車を掛けます。
Game Deetsの連載は隔週なのですが、ついに連載スケジュールにシワヨセが行くようになってしまい、今回のように間が空くことになってしまったのです。
実は『週刊ファミ通』の連載も、その余波で2回ほど休んでいます(笑)。
読者のみなさんも「西川善司の連載、間が空いてるなぁ」と感じたときには「西川善司は、また忙殺されてるんだな」と思ってくださいませ(笑)。
アメリカでも完売だったSwitch
というわけで、さっそく本題に入ります。
3月3日、任天堂から「Nintendo Switch」(以下、Switch)が発売されました。みなさんは入手できましたか。
ボクは、普通にヨドバシカメラで予約できていたのですが、3月3日はGDCでサンフランシスコにいたので、実際に手にとることができたのは帰国後でした。
帰国したのは3月5日。成田空港からのその足で、ヨドバシカメラに立ち寄った次第です。
アメリカでの発売日も当然、アメリカ時間の3月3日だったわけですが、現地も、けっこう盛り上がっており、電気量販店のBEST BUY、ゲームショップのGameStopは、当日販売分はほぼすべてが予約分だといっていました。
当日販売分としては約20台前後があったそうですが、それらは前日の夕方あたりから並び始めた人たちに割り当てられて、おしまいだったようです。
GameStopの店員に話しかけてみると、同店では当日販売分は150台で、うち130台が予約した人の分だといっていました。
日本に帰国してから1週間後、埼玉の地元の郊外型のヤマダ電機を訪れたところ、在庫が残っていました。
ちょうどこの時、アメリカ在住で一時帰国していた友人がほしがっていたので、これを購入。
後日、彼に譲ってあげたところ、とても喜んでいました。もしかすると、郊外型の店舗は狙い目かもしれません。
ちなみに、Switch本体は、Amazonでは3月下旬現在約10,000円上乗せの転売価格で販売されていますね。
1月のSwitch発表会の時に話した、任天堂の広報担当の方によれば、発売日以降、仮に品薄になったとしてもそれは一時的なもののはずで「供給体制にはかなり自信がある」と述べていました。
まぁ、春は、日本は入学・入社シーズンですから「お祝いプレゼント」特需もあって、特に品薄なのかも知れません。そのうち、落ち着くことを期待したいものです。
それと、Switch関連といえば「Nintendo Switch Proコントローラー」(以下、プロコン)も品薄なようです。
Switchは、本体左右に脱着可能なコントローラを駆使してプレイすることができるため、スタンダードなフォルムのゲームパッドは別売りです。
次回お話しする『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』などの、本格的な操作が求められるゲームではプロコンが使いやすいということで徐々に人気を上げていったようです。
今では、Amazonなどでは1.5倍くらいの転売価格で販売されていますね。
これも、郊外型の電機量販店では、原稿執筆時点で普通に売っていましたので、探してみる価値はあるかも知れません。ボクは、発売日の1ヶ月前にAmazonで6,834円で予約購入できました。
Switchのメモリー性能は「PS3」あるいは現行ハイエンドスマホ製品相当
発表会時点では、いろいろと謎の多かった「Switchのスペック情報」ですが、発売後は、各メディアで本体分解解説記事などが公開され、いろいろと分かってきましたね。
分解記事ですぐ判明したのが、汎用部品を使っていたメモリチップの部分です。サムスン製の32ビットバス接続のLPDDR4メモリチップ「K4F6E304HB-MGCH」が採用されていました。
これが2枚実装されていることで、64ビットバスである事が判明。メモリチップの性能値とバス幅から、メモリ帯域が25.6GB/秒であることが算出できます。
25.6GB/秒というと、ちょうど「PS3」の帯域と同じです。ちなみに「Xbox 360」は22.4GB/秒でした。
Switchは、メモリ性能的にはこの時代のゲーム機のクラスということになります。ちなみに、今世代機のPS4は176GB/秒、「Xbox One」は68.3GB/秒です。
メモリバス幅はPS3、Xbox360世代は128ビット、PS4、Xbox One世代は256ビットなので、だいぶ狭めです。
これは、Switchのシステムプロセッサ(SoC)が携帯電話や組み込み機器向けを想定されて開発されたNVIDIAのTEGRAベースだからです。
たとえば、iPhone 7のシステムプロセッサの「Apple A10 Fusion」もメモリバス幅が64ビットで、搭載されているサムスン製のLPDDR4メモリチップが「K3RG1G10CM」であることから、メモリ帯域は29.86GB/秒です。
Android系スマートフォンの新世代SoCの「SnapDragon 835」も、メモリバス幅は64ビット、メモリ帯域は29.86GB/秒と発表されており、同等です。
任天堂としては、「Switchは、携帯ゲーム機としても使える据え置き型ゲーム機である」と発表していますが、メモリアーキテクチャ的には最新のハイエンドスマートフォン相当であることは間違いありません。
SwitchのSoCは「TEGRA X1」ベースで、製造プロセスは20nm?
昨年10月、任天堂がSwitchを予告した際、同タイミングでNVIDIAがブログを発表しました。そこには「Switchには専用カスタムされたTEGRAプロセッサが採用された」ことが記されていました。
その後、筆者も含めて、このカスタムTEGRAがいったいどんなものなのかを考察したものです。
今年の1月の正式発表時にも、この点については詳細は明かされずじまいで、「早く答えがほしい」とやきもきさせられましたが、どうやら徐々にその正体が見えてきたようです。
というのも、「Techinisights.com」が、Switchに搭載されているカスタムTEGRAの実物のDieを、顕微鏡写真で撮影して公開したのです。
この写真は、内部のレイアウトが驚くほど「TEGRA X1」と一致している、とテック系情報YouTuberのSpawn Waveが指摘しています。
これが本当に正しいとすれば、Switchのシステムプロセッサは、当初、有望視されていたNVIDIAの最新GPUコアである「Pascal」コアベースではなく、先代の「Maxwell」コアベースであることになります。
これと同時に、製造プロセスが16nm FinFETではなく、20nmであることも確定されます。
「カスタムTEGRA X1を16nm FinFETで製造することもあるのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、プロセッサを製造する際、とてもコストがかかるのが物理設計です。
物理設計をやり直すくらいならば、Pascalベースの「TEGRA X2」を使いますし、そもそも、ダイ写真がほぼ一致していることが真実だとすれば、20nmということは確定的でしょう。
今年、2017年のスマートフォンのSoCはFinFET 14nmのものも多いですし、iPhone 7のA10 Fusionも16nm FinFETです。
SnapDragon 835などの最新型は、FinFET 10nmになります。20nmのスマートフォン向けSoCといえば、「SnapDragon 810」などが該当し、2015年当時は最先端の製造プロセスでしたが、今ではやや枯れた製造プロセスといえます。
この情報が正しいとすれば、任天堂は、価格に配慮してSwitchのSoC製造プロセスに20nmを選択したということになります。
シンプルにいえば、コストを重視した選択ということになりますが、果たして真実やいかに?
巷で話題の「SwitchのカスタムTEGRAのスペック情報」は本当なの?
「Eurogamer.net」と「Digital Foundary」は、信頼できる情報筋から
- CPUの仕様
- GPUのコア数
- 「携帯モード/テーブルモード」(非ドック状態)と「TVモード」(ドック状態)におけるパフォーマンス(動作クロック)
について情報が得られたと言及しています。
おそらく「確かな情報筋」とは、Switchのタイトル開発に携わるサードパーティーゲームスタジオの開発関係者だと思われますが、果たして信用できる情報なのでしょうか。分かりません。
ただ、それによると、SwitchのカスタムTEGRAのCPUは、ARMの「Cortex A57」が4コア、「Cortex A53」が4コアという構成で、動作クロックは1,020MHzだそうです。
CPUについては、ドック状態/非ドック状態にかかわらず1,020MHzだそうです。
まぁ、CPUはゲームロジック、ゲームメカニクスを処理するものなので、ドック状態/非ドック状態でゲーム体験が変わってしまうことは許されませんから、なっとくできる部分です。
GPUは、ドック状態で最大768MHzで駆動され、非ドック状態では307.2MHzで動作するとのことです。
ちなみに、ドック状態ではGPUは最大フルHD解像度の描画を行い、非ドック状態では720p解像度の描画を行います。
「768MHz:307.2MHz」の対比は「1,920×1,080ピクセル:1,280×720ピクセル」の対比とほぼ等しいため、このクロックダウンは「なるほど」という感じです。
CUDAコアは256コアあるとのことなので、FP32(32ビット浮動小数点)の理論性能値は
- ドック時:256CUDA×768MHz×2Ops≒393.2GFLOPS
- 非ドック時:256CUDA×307.2MHz×2Ops≒157.3GFLOPS
ということになります。
PS3が224GFLOPS、Xbox360が240GFLOPSですから、PS3やXbox360よりはだいぶ性能が高いことになります。
PS4は1,843GFLOPS、Xbox Oneは1,310GFLOPSですので、今世代機の競合には大幅に水をあけられた感じです。
ちなみに、Switchの先代機の「Wii U」は352GFLOPSでした。つまり、グラフィックス性能的には+12%程度のパフォーマンスアップしか果たしていないことになります。
逆に考えれば、Wii Uで動作していた「同クラスのゲーム」はSwitchでも動作させることができ、それを持ち出して携帯ゲーム機的に楽しめるということになります。
ちなみに、SwitchのカスタムTEGRAにとって、ベースとなった純正TEGRA X1では、CPUが最大1.9GHz、GPUは最大1GHzだったので、SwitchのカスタムTEGRAの動作クロックはだいぶ控えめになっていることがわかります。
実際、この純正TEGRA X1をフルスピードで動作させていた製品として有名なのは、NVIDIA自身が2015年に発売したAndroid TVセットトップボックスの「NVIDIA SHIELD」です。
ただ、Foxconn社員のリーク情報として「CPUは1,785MHz、GPUは921MHz」というのも出てきているようです。
これが本当だとすれば、GPUの最大理論性能値は(当然、ドック時のものになりますが)、
- 256CUDA×921MHz×2Ops≒471.6GFLOPS
ということになり、PS4やXbox Oneには及ばないものの、Wii Uよりは+34%も高いグラフィックス性能があることになります。
2017年3月現在の英語版のWikipediaでは、SwitchのカスタムTEGRAについて、混在している情報を複合させた内容でまとめているようです。
おわりに
いろんな情報が出てきたものの、結局、確定したのはメモリ性能ぐらいという感じですね。
正確な情報に収束するには、もう少し時間がかかるのかもしれません。次回は、Switchでゲームをプレイした印象について言及していきたいと思います。
(C) Nintendo