【究極ゲーマー列伝】『デレマス』にハマって口座残高が半分に! ガチャ嫌いだった元パチプロ(後編)

スマホゲームに尋常でない熱意を注ぐ「究極ゲーマー」の日常をインタビューで聞いていく『究極ゲーマー列伝』。課金ガチャが大嫌いだった黒川氏は、『デレマス』の「藤原肇」をきっかけに口座の残高が半分に! ゲームから始まった友人たちとのちょっといい話も……?

インタビューの前編はこちら

ガチャは回せば回すほど次のイベントがラクになる!

前回のお話で、『アイドルマスター シンデレラガールズ』でお気に入りのアイドル「藤原肇」を手に入れるために課金を決意した黒川氏。しかし、これをきっかけにどんどん貯金を切り崩し……。

陶芸家の跡継ぎだが、いろいろな経験をしたいという理由からアイドルを目指す藤原肇。16歳の少女だが、しっかりした考えの持ち主

――課金嫌いの黒川さんが、即座にWeb Moneyの購入に走るくらい、SRの「藤原肇」はドンピシャなイラストだったんですね。で、ガチャを回すのですね?

黒川氏:そうなんだけど、たった2%の確率のカードが、4万円程度では出るわけがありません。そこでオレが使ったのは、「引換券」のシステムです。

――「引換券」とは?

黒川氏:それは、10連ガチャを回すともらえる「引換券」をためると、キャラクターを選択してゲットできるシステムです。これならば「藤原肇」を選べる。

――でも10連ガチャを回すこと自体、けっこうなお金がかかりますよね?

黒川氏:そのとおり! 引換券はランダムで何枚かもらえるんだけど、全然たまらないんです。結局、「藤原肇」をお迎えするまでに6万8,000円も掛かりました。

――さっき買ってきたウェブマネー、4万円っていってましたよね?(笑)

黒川氏:だって4万円をガチャで遊ぶと、30分もしないでなくなりますよ。パチスロ以上に金を吸い取ります。でも、「藤原肇」を手に入れるためなので、そんなことは知ったことじゃありません。

しかも、『デレマス』は同じカードを2枚そろえて「特訓」すると、別のイラストを見られるんです。なので「藤原肇」はもう1枚必要。

――なるほど。

黒川氏:結局、2枚をそろえるのに11万円くらいかかりました。両方とも引換券を使ったので、このシステムがあって本当によかったです。ガチャで入手するしかないゲームだったら、この何倍かかったかわかりません。

11万円の報酬がこのカードだ! 特訓前のカードとは違って、急に華やかになった

――もう完全にハマってますね。

黒川氏:『デレマス』の10連ガチャを回すと、「スタドリ」と「エナドリ」(回復剤のようなもの)も手に入るんですよ。これをたくさん持っていると、イベントが有利になるんです。いつでもスタミナを回復できますから。となると、だんだん考え方が変わってきます。

――どんなコトを思うように?

黒川氏:あのころのオレは、「ガチャは回せば回すほど、次のイベントが楽になる」と思うようになってました。イベントで上位になれれば、新しいキャラクターをもらえる可能性が高くなります。

――すごい仕組みですね。

黒川氏:このころは思いっきり『デレマス』を楽しんでいました。ガチャを回しまくるし、イベントは走りまくる。このゲームが面白いかどうかを判断するために始めたことなんて、すっかり忘れて(笑)。

――でも、それだけハマるとお金もかかりませんか?

黒川氏:お金を使いまくっていたあるとき、「オレの預金はいくら残ってるんだろう?」と思って通帳を見たら、半分くらいになってるんです。もちろん、他のものにも使ってましたが、半分くらいに。

――何だか話がよくない方向に進んできました。

黒川氏:『デレマス』でソシャゲにハマってからはズブズブで、『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』も遊びましたから。

――そもそも「藤原肇」を手に入れたら、もうやめてもいいと思いませんでしたか?

黒川氏:そう思うでしょ? でもね、遊んでいると他のアイドルたちも魅力的に感じてくるんですよ。そこからは食い散らかしまくりっス(笑)。

――他には誰が気に入りましたか?

黒川氏:1位は不動で「藤原肇」なんだけど、他には美しい容姿なのにお酒が好きなアイドル「高垣楓」。オレはいつか楓さんと酒を飲みたい! ということで2位。

3位は、ちょっと影があるお姉さんキャラの「三船美優」。世界の三船敏郎は『隠し砦の三悪人』ですが、クールの三船美優さんは『癒やしアイドル三重士』なんです。

黒川氏が2番目に好きなキャラクター「高垣楓」。お酒が大好きなアイドル。しかも、けっこう強いらしい

そして3位の「三船美優」。名前のとおり、優しそうな顔をしている。「癒しアイドル三重士」の「重」の意味は……

――よくわかりませんが、何となく熱意を感じました!

黒川氏:今挙げた3人に共通しているのは、言葉使いがとてもていねいなところ。お姉さんチックな雰囲気のキャラクターが好きなのは、きっとオレが3人兄弟のイチバン上なので、甘えたい願望があるのかもしれません。

――ところで、先ほど「口座残高が半分になった」とおっしゃっていましたが、いくらがいくらになったのですか?

黒川氏:ギャンブル用の口座には元々700万くらい入っていたので、たぶん350万くらい使ったことになりますね。

――えええっ!? たかだか1~2年で350万も課金したんですか?

黒川氏:イェス!(笑)

パチプロ生活を送っていた黒川氏が語る――「ギャンブル」とは!?

――ギャンブル用の口座に700万も用意しているというのもすごい話ですが、儲かっているのにパチプロ生活をやめた理由は?

黒川氏:法改正が入って「爆裂系」の台が規制されたんです。そんなこともあって、考えを改めるようになりました。「この生活を続けても、なにも残らないじゃないか」と。あの生活を30年続けたときのオレの未来が予測できなかったんです。

――なるほど。一生パチプロを続けるつもりはなかったのですね。

黒川氏:そして、ためたお金で某アニメ系専門学校に入学したんです。元々ゲームが好きだったので、ゲームを作る仕事に就きたいなぁと。ですが、今はゲーム業界とは関係ないシステムエンジニアをやっています。ゲームの仕事はできなかったけど、学校で学んだことはムダにはなりませんでした。

――なんだか急にマジメなお話になりましたね(笑)。ギャンブルのプロをやってきて、学んだことはありますか?

黒川氏:ギャンブルは、どこまでいっても遊び。あれを職業にしてはダメだってことがわかりました。娯楽として向き合わないと、精神をやられちゃいます。

それに、「今日も稼ぐぞ」と思ってやると楽しくないです。ギャンブルが生活の一部になってしまったら、楽しむ余裕なんてありません。いつ負けるかわからない危機感を抱きながらギャンブルをすると、なんかギスギスしちゃうんです。

――普通の仕事をしている今の生活と、パチプロのころの生活、どちらが楽ですか?

黒川氏:今の仕事は大変だけど、パチプロ生活に比べたら楽かもしれませんね。会社に勤めて毎日の業務をこなしていれば、ちゃんと安定した給料をもらえます。

パチプロのころは自分の腕で稼ぐしかないので、かなり辛くてしんどい毎日でした。

――まるで職人のような発言です。

黒川氏:そうかもしれませんが、世間的に見たらクズですよ。働きもせずに、クズのような生活をしている。だけど金だけは持ってる……。もうね、どうしょうもないクズです(笑)。

時間がある休日は、大好きな競馬場に足を運ぶ黒川氏。馬券を買うだけでなく、「レースを観戦するのも好き」とのこと

――クズかもしれませんが、儲かっているとやめにくいと思います。1日に最大で儲かった金額は?

黒川氏:パチンコでいちばん勝ったのは「73万円」です。反対に、最も損をしたのは「15万円」の負け。

――1日に73万円ですか? 笑いが止まらないですね。うらやましい!

黒川氏:そうなんですけど、とにかく疲れますよ。休憩したいのに、休まずにずっと回し続けるんです。当たっているときに休憩を挟むと、流れが変わってしまいそうで休めないんです。

これ、ギャンブルやる人の「あるある」です。トイレもメシも極力ガマン。身体にもよくないっス。

――パチンコ以外の儲けは?

黒川氏:スロットは1日で「63万円」。これは負けがヒドくて、1日で最大「27万円」も持っていかれました。あのときは頭がどうにかしていて、手持ちがなくなってもATMまで走って、じゃぶじゃぶとお金を突っ込んでしまったんです。

ギャンブルに行くとき、普段は財布に7万円しか入れないルールでやってるから、そこまで負けないんですけど。

――ギャンブルって、それが怖いですね。

黒川氏:競馬で最高に勝ったのは、忘れもしない「第34回エリザベス女王杯(2009年11月15日)」です。当たった金額はウン万円です。

――えええっー!? それ、1つのレースでですか?

黒川氏:そうです。今でも馬の名前を覚えてますよ。クィーンスプマンテ、テイエムプリキュア、ブエナビスタがきたんですけど、オレはそのレースに馬連、馬単、ワイド、三連単、三連複の馬券を買って、すべて的中しました。

2番めに大勝ちしたのは「安田記念」で、こっちも何百万か当たりました。あれは三連単を500円買っただけなので、ビックリしました。

――500円がウン百万円に変わるなんて、夢がありすぎです。反対に負けたときはいくらですか?

黒川氏:年末のイベント「有馬記念」で50万円も負けたことがあります。1点買いじゃなくて、いろいろ選んで買ってるのに、オレが選んだ馬券だけことごとく外れました。あそこまでキレイに外れると笑うしかないってレベルでした。でも、いい厄払いになったんじゃないかな……とポジティブに考えました。

――さすがギャンブラー。負けたときのメンタルも強いですね(笑)。

黒川氏:もちろん、そのときはムチャクチャ悔しいですけどね(笑)。とまぁ、今はそんな感じでギャンブルを楽しんでいます。実は今日も、馬券を買いにJRAに行ってきました。

――今日もですか(笑)。そんな日にお時間をいただいちゃってすみません!

黒川氏:いや大丈夫、毎週行ってるから(笑)。馬券を買うだけじゃなくて、レースを見ること自体も好きなので、時間があるときは競馬場にも足を運んでます。今オレがギャンブルを楽しんでるのを考えると、昔は必死すぎました。あのころのオレは楽しんでなかった!

オレがいうのもなんですが、ギャンブルはほどほどにしたほうがいいですよ。

この日、インタビューの予定がなければ、黒川氏は競馬場に行っていたかもしれない。

最後にちょっといい話! 黒川氏がスマホゲームで得たモノ

――興味深すぎるお話だったので、ついつい聞いてしまいましたが、再び軌道修正させてください。黒川氏の資金源が分かったところで、『デレマス』の話をしましょう(笑)。

黒川氏:あぁ、そうですね。今日は何の話をしにきたんだっけと思っていました(笑)。

――最近『デレマス』は、どれくらい遊んでいますか?

黒川氏:取材を受けておいて、今さらいうのもおかしい話ですが、以前に比べるとゲーム熱はそこまで高くありません。昔は眠気を吹き飛ばすためにラウドロックを聴きながら、24時間ぶっ続けプレイとかしてましたが、いまは熱くなり過ぎず適度にプレイしている感じです。

湯水のごとく使っていた課金もそこそこにして、お金は他のことに使うようになりました。

――他のこととは、趣味でしょうか?

黒川氏:そうです。オレは料理を作るのが好きなので、料理の食材を買ったり、大好きな酒を飲みに行くのに使ったりしています。オレがいっても説得力ありませんけど、眼を真っ赤にしてガチャを回すよりも、人間としては正しい生き方だと思います(笑)。

――でも、課金しまくっていたころを後悔していませんよね?

黒川氏:もちろんです。楽しかったからね。ゲームの課金は「何も残らない」という人がたくさんいますけど、それは違うと思います。

――その理由は?

黒川氏:ゲームとの向き合い方によりますが、「ソーシャル」って「人とのつながり」ですよね? オレは『デレマス』などのゲームで知り合った人たちと、今でもよくいっしょに飲みに行きます。これはオレに限ったことではなくて、特に『アイドルマスター』をプレイしているプロデューサー界隈ではよくある話です。

――どうやって友だちを作ったのでしょうか?

黒川氏:Twitterなどを使って「プロダクションを作りました」とかつぶやくと、知らない人から「入れてください」とか「応援してます」とか、何かしらの反応があったんです。同じ『デレマス』をプレイしている人たちなので、Twitterでの会話が弾んで、その流れで「今度オフ会をしようか」みたいな感じで交友関係が広がってきました。

――ゲーム内だけではなく、SNSを使うのですね。

黒川氏:あとは、オレが好きな「藤原肇」についてつぶやいたら、それに反応した人がいてうれしかったなぁ。彼らとも飲みに行きました。ソシャゲのオフ会って面白いですよ。いろんな職業の人がいるので、普段あまり会えない方々と交流できますから。

――仕事のことを考えないで飲める友だちって、大事ですね。

黒川氏:仕事関係の飲み会だと、いろいろありますもんね(笑)。だけど『デレマス』の飲み会なら気兼ねなく参加できるし、楽しく美味い酒が飲める。これがソシャゲのいいところだと思います。

ひとことで「このゲームが楽しい」といっても、ゲーム本編以外の周りの環境も含めての「楽しい」です。今オレが『デレマス』に感じている「楽しさ」は、ちょこっと遊んだだけでは気づけないと思います。プレイ時間そのものは以前よりも減っていますが、飲み会や交流会ではいまだにガチのアクティブユーザーです。

最新の『デレステ』は「ファミコン時代」の攻略魂をくすぐるゲーム

――『アイドルマスター』関係のゲームだと、最近はリズムゲームの『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』が人気です。黒川さんはプレイしていますか?

黒川氏:プレイしています。初代の『ビートマニア』や『三味線ブラザーズ』は遊んでいましたが、オレは音ゲーが苦手なんです。だからイライラするときはあります。

そんな人のために、このゲームでは「スタージュエル」と呼ばれるアイテムを消費すれば無限にコンティニューできるんです。だから、どれだけ下手でもクリア可能です。だけど、それはやりたくないんですよね。

黒川氏の『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』(通称、デレステ)のホーム画面。当然のように「藤原肇」が映っていた

――ゲーマーっぽい発言ですね。

黒川氏:そうかもしれませんね。音ゲーは苦手だけど、アイテムの力を借りずにクリアしてみたい。なので、この機会にできるようになろうかなぁ~と思い、ちょこちょこマスター難易度をクリアできるようになってきました。そうなってきたとき、ふと「オレは今、ゲーム本来の楽しみ方をしている!」って思いました(笑)。

――何度も繰り返しプレイして、徐々に腕が上がってくると楽しいですよね!

黒川氏:ファミコン時代のゲームって、理不尽なゲームが多かったですよね? 開発者側の「クリアーできるもんならやってみろ」みたいなメッセージがあったじゃないですか?(笑) そのころの気持ちが再燃して、難しい曲でも「ノーコンティニューで絶対クリアしてやろう!」って思いました。

『デレステ』でも、黒川氏のお気に入りアイドルはこの3人に変わりなし!

――『デレマス』でお金をかけまくっていた黒川さんの発言とは思えません。『デレステ』ではガチャを回さないのですか?

黒川氏:ガチャは「新田美波」のときに4万円分くらい回しました。1.5%の確率で出るらしいけど、エグいですね。当然のように出ませんでした。

黒川氏は「クールP」(クール属性のアイドルを好むプロデューサーのこと)なので、4~5人目のアイドルもクール属性

――もしも、「藤原肇」のレアカードが実装されたらどうしますか?

黒川氏:そりゃぁ回しますよ! そのための「藤原貯金」ですからね。

――「藤原貯金」って何ですか?(笑)

黒川氏:競馬とかでもうけたお金を貯金している口座があるんです。それが「藤原貯金」です。いつ実装されてもいいように、常に準備万端です。運営さんっ! よろしくお願いします。

――なるほど、本日はありがとうございました(笑)

(C)窪岡俊之
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