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アルカリレットウセイに隠された秘密に迫る!
『#コンパス』で実現したniconicoのクリエーターとの共同開発。
以前の林プロデューサー(以下、林P)へのインタビューでも、そのきっかけを聞かせていただいたが、実際にその開発の様子はどのようなものであったのだろうか。
niconicoクリエーターのイマジネーションは、どのようにゲームに活かされているのか?
そのような疑問を解決すべく、ヒーローに焦点を当てて、ヒーローにかかわった人たちに話を聞いていくシリーズ1回目は、リリカにスポットを当てる。
アルカリレットウセイ
今回は、ガンナーのヒーロー「リリカ」をテーマに、「アルカリレットウセイ」を作曲したかいりきベアと、キャラクターデザインを担当したNHN PlayArtから、林プロデューサー(林P)に話を聞いた。
ガンナー第1号として誕生したリリカ
まず、リリカというキャラクターは、どのようなきっかけで生まれたのだろうか。
「リリカは、ゲームのルールが完成する前、ヒーローのロールを考えたときに、ガンナーの基本となるヒーローとして作り始めました」
リリカ誕生のきっかけを林Pはこう明かす。双挽乃保、リリカ、ジャスティス、十文字アタリの4人は、それぞれのロールの第1号として開発チーム内で作られたという。
さまざまな世界観のヒーローがなんでも入っているというコンセプトは、当初から考えられていた。
そのため、最初に作られた4人には、ゲーム、アニメ、SF、学園モノといったキャラクター性のバリエーションを持たせたのだという。
しかし、まだ、キャラクターが作られた段階で、用意されていた設定は「『魔法少女リリカルルカ』というアニメの主人公」「ルルカというキャラクターのほうが人気がある」の2つのみだった。
かいりきベアが音楽の道に入ったきっかけはあのゲーム!
リリカのキャラクターの原型ができてきたところで、テーマソングを担当するかいりきベアの出番となるのだが、VOCALOID(ボカロ)の楽曲に詳しくないという人のために、彼の経歴を紹介しよう。
2011年に第1作『ワカレノオト。』を投稿しデビュー。
2015年3月には、1stアルバム『IMITATION GALLERY』で、メジャーデビューを果たした人気のVOCALOIDプロデューサー(ボカロP)のひとりだ。
ワカレノオト。
現在、人気ボカロPとして活動する彼が音楽の道を歩みだしたのは学生時代。
当時、ゲームセンターに通う音楽とは無縁な少年だったという彼は、とある格闘ゲームの音楽に衝撃を受けた。
「『GUILTY GEAR』(ギルティギア)を学生時代にプレイしていて、メタルなBGMがかっこよくて、ギターを始めました。なので『#コンパス』でコラボをしたときは驚きました」
その後、独学でギターを練習した彼は、インターネットのメンバー募集サイトを通じてヴィジュアル系バンドに参加。
当時の音楽性と現在の音楽性の違いについて聞いてみると「今のVOCALOID楽曲は『四つ打ち(※1)』のリズムの曲が多いのですが、当時演奏していたのは、シンコペーション(※2)の90年代~2000年代のビジュアル系に近い曲でした」
※1 四つ打ち:「ドン・ドン・ドン・ドン」と1小節に均等に4回バスドラムを鳴らすリズムの取り方。テクノやハウスなどのノリが良いダンスミュージックで多用される
※2 シンコペーション:リズムをとる拍の強弱を変える手法。例えば「タン・タン・タン・タン」というリズムのあとに「タン・タン・タターン」というリズムが続く。シンコペーションを入れることで躍動感が生まれる
「作詞作曲は、ほかのメンバーが担当し、僕はギター専門という状態でした」
楽曲がカラオケで配信され、海外での公演も実現したが、2011年にバンドから脱退する。
「2007年ごろからボカロブームがあって、ニコニコ動画でVOCALOID-PVをよく聞いていて、バンドを辞めたのを機に、自分でも投稿を始めました」
作詞作曲もほとんど初挑戦というスタートから、バンド時代に培ったギター演奏を生かしたロックサウンドをはじめ多彩な曲を発表してきた。
5作目『完全懲悪ロリィタコンプレックス』は、10万再生を達成し、VOCALOID殿堂入りを果たした。
完全懲悪ロリィタコンプレックス
最初は不慣れで難産だったという作詞だったが、独特な物語性のある歌詞の曲も人気となり、『マネマネサイコトロピック』と『イナイイナイ依存症』は小説化もされた。
マネマネサイコトロピック
イナイイナイ依存症
バラエティ豊かな楽曲を発表し続ける秘訣について「そのときに、よく聞かれているボカロ曲について研究しています」と明かす。
ドラムパターンはどんなものがいいのか、イントロフレーズは何のスケール(音階)を使っているのか、どんなメロディーなら多くの人に聞いてもらえるのか。
先の物語性のある歌詞も、ストーリー性のある曲への関心が高まっていたことをきっかけに、作ったものだという。
そんなたゆまぬ研究を重ねることによって、聞く者の耳に残るサウンドが生み出されいる。
アルカリレットウセイが描き出すリリカの内面
かいりきベアに、リリカのテーマソングの依頼が届いたのは、2016年の夏。
最初に与えられた情報は、キャラクターの仕様とイラスト、そして「魔法少女リリカルルカというアニメの主人公」「ルルカというキャラクターの方が人気がある」という設定のみ。
「最初に思い浮かんだのはサビの『ルルカリリカルラ リラルララ』というフレーズとメロディでした」
サビから肉付けをするように、曲を作り、同時進行で歌詞をつけていったという。耳に残る特徴的なイントロは、一番最後に作られた。
普段はバンドサウンドで作っていたが、魔法少女アニメを意識し、シンセサイザーによるかわいらしい音を選んだ。
そして、曲作りの上で、かいりきベアが注目したのはリリカの「ルルカというキャラクターのほうが人気がある」というポイント。
「ルルカのほうが人気があるというところで、リリカは劣等感を感じているんじゃないかと思ったんです。
そこで、ゲーム内では明るく振舞っているんですけど、本当は自分を繕っている少女というのを書いてみました」
また、明るそうな曲調とダークな歌詞の組み合わせには、ボカロPとしてのこだわりもあった。
「明るい魔法少女の曲なら、もっとうまく書ける人がたくさんいると思うんです」とかいりきベアは切り出す。
普段は、暗いテーマの曲を多く書いている自分がどうして、彼女の曲を書くのかということを考えたとき、ゲーム内で流れる音楽という位置づけだけでなく、自身が投稿する動画から『#コンパス』というゲームにつなげていくことに意識が向いたという。
これまで、名前が出ない形でゲームに音楽を提供したことはあったが、「かいりきベア」という名前が出る形での仕事は初めて。
そして、イントロや曲調の明るい魔法少女感に、ダークなかいりきベア感をミックスし、最終的に行き着いた『アルカリレットウセイ』だった。
数あるボカロのなかで、初音ミクを起用した理由を聞いてみた。
「持っているボカロソフトをひと通り試したなかで、一番しっくり来たのが初音ミクでした。曲も歌詞も暗めなので、DARK(※3)がマッチしました」
※3 DARK:初音ミクには声色ごとに複数のデータベースが用意されている。DARKは、きれいな声と息遣いで、物憂げな歌声を表現する
開発当初のリリカは3頭身だった!
とはいえ、思い切った歌詞について、ゲーム開発側からどのように思われるかという不安はあった。
「最初に、提出したときはダメだといわれたら、すぐに作り直す気持ちで待機していました」と提出時の心境を話す。
対する、林Pは「リリカのテーマソングとして、最初はアニメのオープニング曲のような明るいものをイメージしていました。なので、初めて聞いたときは『そうきたか!』と唸りました」と振り返る。
「リリカには元から『ストレートな魔法少女ではない』というイメージがあったので、そこにうまくはまったなと思いました」と林Pは語る。
林Pによると、この段階でのリリカのイラストは、現在のものよりも幼かったのだという。
「最初、かいりきベアさんにお見せしたときは、まだ3頭身くらいの子どもっぽいリリカだったんです。
ただ、曲のイメージが僕らのなかに刷り込まれて行って、開発内でももっと磨きたいねという話になり、今の5頭身くらいの姿になりました」
ボカロPや絵師から、当初のイメージとは異なる曲が上がってくることに対して「もともと『#コンパス』にいろいろなクリエーターが参加するうえで、懐が深いように作りたいと思っています」と語る。
最後に、ゲームでリリカを使っているユーザーについて「リリカを愛してくださっている方がすごく多くいて、感謝の気持ちでいっぱいです」と感謝の気持ちを話すかいりきベア。
『#コンパス』のniconicoとの取り組みについて「ゲームを通じて曲を聞いてくれたり、逆に曲がきっかけになってゲームを遊んでもらったりと、ユーザーのなかで作品同士がリンクしてくれたら、うれしいですね」と思いを語ってくれた。
複数のクリエーターが絡み合うことで、作品により深みが生まれるシナジーも、『#コンパス』の魅力なのだろう。
(C) NHN PlayArt Corp.
(C) DWANGO Co., Ltd.