【法林岳之のFall in place】第38回: リコールを乗り越え、ついに復活したGalaxy Note8発表

昨年8月にグローバル市場向けに発表され、国内市場への投入も確実視されながら、内蔵バッテリー発火の不具合によって、全世界でリコールをすることになってしまったサムスンの「Galaxy Note7」。あれから1年、Galaxy Noteシリーズを愛する世界中のユーザーの復活を望む期待に応え、最新モデル「Galaxy Note8」が発表された。ニューヨークで行なわれたサムスンの発表イベント「SAMSUNG UNPACKED 2017」を現地で取材することができたので、その内容をレポートしよう。

大画面&ペン入力という個性を持つGalaxy Noteシリーズ

現在、国内外で販売されるスマートフォンには、それぞれにさまざまな特徴があるが、「大画面」と「ペン入力」という個性で、数多くのユーザーの人気を得てきたのがサムスンのGalaxy Noteシリーズだ。

SAMSUNG UNPACKED 2017は、ニューヨークのPark Avenue Armoryを借り切って開催された

Galaxy Noteシリーズは、2011年に発売された初代モデル「GALAXY Note」が発売され、当時としてはかなりの大画面だった5.3インチディスプレイを搭載し、電磁誘導式のペン入力を組み合わせることで、手帳(Note)のように使えるスマートフォンとして、注目を集めた。

国内では2012年4月にNTTドコモから「GALAXY Note SC-05D」が発売され、その後、2012年11月に2代目モデル「GALAXY Note II」、2013年10月には三代目モデル「GALAXY Note 3」と、着実に世代を重ね、進化を遂げてきた。

2014年10月には初のエッジスクリーンを採用した「GALAXY Note Edge」が発売された。2015年8月にグローバル向けに発表された「Galaxy Note 5」は、国内市場への投入が見送られたが、昨年8月に発表された「Galaxy Note7」は国内市場への再投入が企画され、NTTドコモとauの秋冬モデルとして、発表されるはずだった。

ところが、既報のとおり、昨年8月のグローバル向けの発売直後から内蔵バッテリーの不具合に起因する発火トラブルが相次いで発生し、結果的に全世界でのリコールという前代未聞の事態を引き起こしてしまい、その計画は実現しなかった。

Galaxy Note7のトラブルの内容については、すでに今年1月にその詳細が報告され、本連載の「第31回: Galaxy Note 7の発火問題から学ぶべきこと」を参照していただきたいが、このトラブルは世界中で報じられ、中でも航空業界や運送業界では重大な事故につながり兼ねないとして、機内への持ち込みや宅配便での取り扱いが厳しく制限されるなどの措置がとられた。

このGalaxy Note7の不具合によるトラブルは、サムスンのブランド価値を損ない、業界のシェアもトップを譲り渡してしまうほどのダメージがあったとされるが、今年3月にはフラッグシップモデル「Galaxy S」シリーズの最新モデル「Galaxy S8」「Galaxy S8+」を発表し、国内向けにはNTTドコモとauの夏モデルとして、5月から販売が開始されている。

中でもGalaxy S8+は、Infinity Displayと名付けられた18.5:9のSuperAMOLED(有機ELディスプレイ)を搭載し、本体前面のほとんどをディスプレイが占めるという斬新なデザインを実現することで、各方面で高い評価を得ている。

そして、いよいよ1年前の汚名返上を目指して、グローバル市場向けに発表されたのが今回の「Galaxy Note8」というわけだ。

今回発表された「Galaxy Note8」。今年3月に発表された「Galaxy S8/S8+」同様、前面のほとんどを画面が覆う6.3インチの「Infinity Display」を搭載

昨年のGalaxy Note7、Galaxy S8/S8+で実現されていた仕様を継承しながら、新たにデュアルカメラや手書き入力の新機能などを搭載することで、これまで以上に魅力的な端末に仕上げられている。

6.3インチInfinity Displayにデュアルカメラ搭載

まず、本体の外観については、昨年のGalaxy Note7から大きく変更され、今年のGalaxy S8/S8+の流れをくむデザインを採用している。Galaxy S8/S8+のボディをベースに、周囲の丸みをやや角張らせ、両側面のデュアルエッジスクリーンの曲線も少しエッジを立たせるようにデザインしたことで、Galaxy S8/S8+よりもスクエアな形状だ。

ボディカラーは国と地域によって異なるが、今回の発表ではMaple Gold、Midnight Black、Deepsea Blue、Orchid Grayが発表された

特徴的なのが、本体前面に搭載された「Infinity Display」と名付けられた6.3インチのSuperAMOLED(有機EL)だ。昨年のGalaxy Note7が5.7インチだったことを考えると、かなり大きくなった印象だが、Galaxy S8/S8+と同じように、ディスプレイの左右を湾曲させたデュアルエッジスクリーンで仕上げるのに加え、上下のエリアも従来機種に比べ、グッと狭く仕上げることで、全体的に縦長のボディにまとめている。

ディスプレイの解像度は2,960×1,440ドット表示で、比率としては18.5:9となっている。この比率はGalaxy S8/S8+と同じで、「シネスコ」と呼ばれる21:9などの映像コンテンツなどを再生したときにも広く表示できるというメリットを持つ。もちろん、縦方向に持てば、ブラウザやSNSなどのコンテンツも縦に広く使うことができる。

ディスプレイサイズがひと回り大きくなったが、ボディ幅は74.8mmに抑えられており、6.2インチディスプレイを搭載したGalaxy S8+と比較しても約1.4mmしか幅が増えていない。

ちなみに、ボディ幅で比較すると、5.5インチディスプレイを搭載したiPhone 7 Plusが77.9mm、5.5インチディスプレイを搭載したXperia XZ Premiumが77mmとなっており、Galaxy Note8はライバル製品よりもひと回り大きなディスプレイを搭載しながら、コンパクトなボディ幅に収めている。

また、Galaxyシリーズの特長の1つであった本体前面の物理ボタンによるホームボタンは、Galaxy S8/S8+と同じように、ディスプレイ内のソフトウェア表示に切り替えられている。Androidプラットフォームのナビゲーションキーがソフトウェア表示に切り替わったことで、[戻る]ボタンや[履歴]ボタンのレイアウトが変更できるようになり、他機種からの乗り換えユーザーや併用ユーザーも迷わなくなった。

Galaxy Note8のもう1つの特長は、背面にデュアルカメラを搭載したことが挙げられる。

背面にはデュアルカメラを搭載。標準と望遠のレンズを備える。LEDフラッシュの隣に指紋認証センサーを搭載。前面カメラによる虹彩認証や顔認証も利用可能

2つのカメラを搭載するスマートフォンは、各社がさまざまな形で取り組んでいるが、Galaxy Note8では標準と望遠の2つのカメラを搭載することによって、離れた被写体を撮影しやすくすることに加え、一眼レフで撮影したときのように、背景をぼかして、被写体を際立たせる写真を撮れるようにしている。

標準カメラで撮影。12MPのデュアルピクセルセンサーを搭載。光学手ブレ補正にも対応

望遠カメラで撮影。約2倍のズームで撮影できる。望遠側は12MPカメラを搭載し、光学手ブレ補正にも対応

「LIVE FOCUS」と呼ばれるモードで撮影したときは、撮影時と撮影後の両方でボケ味を調整することが可能だ。最近ではInstagramなどに映える写真が求められる傾向にあるが、そういったニーズにも応えられる仕様だ。

Live Focusを利用すれば、スライダーを左右に動かすだけで、自由に背景のボケ味を調整できる。撮影後にも調整することが可能

インカメラについては基本的にGalaxy S8/S8+の仕様を継承しており、自撮りアプリ「SNOW」のようなデコレーションを組み合わせた撮影機能も搭載される。

S Penの楽しさを拡げる新機能、ゲームも変わる?

Galaxy Noteシリーズの最大の特徴である「S Pen」についても強化されている。スマートフォンやタブレットでも市販のタッチペンで操作することができるものは多いが、S Penは前述のように、ワコムの技術を応用した電磁誘導式にスタイラスペンであり、電池などを内蔵することなく、高機能なペン操作を可能にしている。

今回のGalaxy Note 8に採用されたS Penは、0.7mmのペン先を採用し、4,096段階の筆圧検知が可能で、防水防じんにも対応し、水中での手書き入力も可能にする(現実的に使うかどうかはともかく……)。

基本仕様そのものはGalaxy Note7を継承したもので、スクリーンショットや写真に手書きで文字を書き加えたり、Notesアプリにメモを取ったりといった使い方ができるが、「Live Message」などの新機能も追加されている。

Live Messageは手書きで入力したメッセージをGIFアニメに変換し、メールやMMS、SNSのメッセージ機能などで送信できるものだ。手書きのプロセスがGIFアニメで再生されるため、絵文字やスタンプとは違った楽しさが演出できる。ちなみに、GIFアニメは動画の一部を切り出して、変換する方法にも利用されている。

手書きメッセージをGIFアニメに変換して利用できるLive Message。MMSやメール、メッセンジャーアプリなどに送信可能

昨年のGalaxy Note7に搭載されていた「画面メモ」は、本体が画面オフの状態でもS Penを取り出すと、すぐにメモができるという機能だが、Galaxy Note8では書いたメモをAlways On Display(待機中も薄らと画面表示を続ける機能)に表示したり、ToDoリストのように編集しながら、継続して利用できるようにしている。

本体からS Penを抜き、アイコンに近づけると表示されるS Penのメニュー。S Penに関連するアプリや機能も整理されていて、わかりやすい

また、Galaxy Note7ではWebページやメールなどに表示されているテキストに、S Penを近づけると、ポップアップで翻訳を表示できる機能が搭載されていたが、Galaxy Note8では単語だけでなく、1ブロックの文章を一括して変換できるようにしている。

S PenをWebページなどに表示されたテキストに近づけると、各国語に翻訳することが可能

この他にも動画などをウィンドウで表示したり、S Penを当てた部分だけを拡大するルーペ機能などもサポートされており、今まで以上に幅広いシーンで活用できるように進化を遂げている。

さらに、周辺機能を組み合わせた用途も拡大している。昨年のGalaxy S7 edge、今年のGalaxy S8/S8+でも採用されてきたGear VRは、Galaxy Note8のサイズが大きくなったこともあり、新モデルが提供される。VR対応のコンテンツも着実に拡充が進んでいるが、ちょっと気になるのが専用クレードル「Samsung DeX」だ。

Samsung DeXはGalaxy S8/S8+で初めて公開されたもので、専用クレードルに端末を載せ、パソコン用モニターや家庭用テレビなどをHDMIケーブルで接続すると、モニター上にパソコンと変わらないような操作画面が表示される。具体的には複数のアプリをウィンドウ表示に利用したり、Bluetoothキーボードやマウスを接続して、オフィス文書なども作成できるというものだ。

Galaxy Note8やGalaxy S8/S8+を載せ、ディスプレイにHDMIケーブルで接続するDeX Station。Galaxy S8/S8+では国内向けに販売されなかった

今回のGalaxy Note8もSamsung DeXに対応しているが、新たにSamsung DeX対応のゲームなども供給されることになり、接続したモニターに全画面表示をして、ゲームを遊べるようにしている。

スマートフォン向けのゲームというと、基本的にはスマートフォンの画面のみで遊ぶスタイルが一般的だったが、今後、こうしたパソコン用モニターや家庭用テレビでも遊べるスタイルが拡がることになるかもしれない。

DeX Stationに対応したゲームアプリは、パソコン用モニターに全画面で表示してプレイすることができる

日本での発売はほぼ確実?

今回、ニューヨークで催された「SAMSUNG UNPACKED 2017」では、プレゼンテーションがはじまる直前のオープニングにおいて、ちょっと印象的な映像が上映された。

サムスンのMobile Communication BusinessのPresidentであるD.J.Koh氏が登壇し、Galaxy Note8が発表された

スクリーンにはこれまでのGalaxy Noteシリーズのユーザーが「いかに自分がGalaxy Noteを気に入っているか」を語る映像が流され、続いて、昨年のGalaxy Note7のリコールに対して、悲しむユーザーや落胆するユーザー、「他のGalaxyでは満足できないんだ」と訴えるユーザーのメッセージも合わせて紹介された。

【法林岳之のFall in place】第38回:  リコールを乗り越え、ついに復活したGalaxy Note8発表

背面の巨大なスクリーンに加え、床面にも映像を投影した空間で、プレゼンテーションが行われた

サムスンとしては、全世界でリコールという厳しい事態を引き起こしてしまったGalaxy Note7の教訓を活かしつつ、Galaxy Noteシリーズを愛してやまないユーザーたちの期待に応えるべく、今回のGalaxy Note8を発表したことを印象づける内容だった。

今回発表されたGalaxy Note8は、9月15日からアメリカを皮切りに、順次、発売される予定だ。気になる国内市場については、過去の例から考えると、NTTドコモとauから発売されると推察される。

昨年のGalaxy Note7ではカタログや販促物なども制作済みで、発表直前の段階で中止が決まったと言われており、おそらく関係各社は「今年こそは!」と意気込んでいるはずだ。

もちろん、国内において、これまでのGalaxy Noteシリーズを愛用してきたユーザーにとっても発売されるとなれば、GALAXY Note Edge以来、3年ぶりの新モデルを手にすることになる。各社の発表を楽しみにしながら、じっくりと待っていただきたい。