この「Gaming disorder」だが、「Gaming」の英辞書での通例的な使用方法を見ると、「賭博・ゲーム」などという意味を示す。あくまでも推測に過ぎないが、オンラインゲーム、ビデオゲームのみにフォーカスしたものではないように思う。
仮にオンラインゲーム、ビデオゲームに類する表記だとすると、同じような障害や事例は、日本では「ゲーム依存症」「ゲーム脳」などの言葉で称され、オンラインゲームにおける「ゲーム廃人」「廃課金者」などネガティブな続面が喧伝(けんでん)されているものが、それにあたるものだろう。
今回のWHOの発表によると、「Gaming disorder」の症例としては、
- ゲームをする衝動が止められない
- 何よりもゲームを最優先する
- 問題が起きてもゲームを続ける
- それらによって個人や家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じる
という。
その症例診断に必要な症状の期間は最低12ヵ月とのことだが、この症例判断期間は長すぎるのではないかと思うのは私だけでないだろう。12ヵ月もかからずともわかりそうなものであるが……。
また、このような症例は先に指摘したように「ゲーム」だけではなく、「賭博」「ソ-シャルネット」への依存症例も当てはまるのではないだろうか。
一方、ゲーム系企業団体も黙ってはいなかった。つまり、自分たちの産業に向けて発信されたアナウンスとして受け止めているということである。
日本のゲームパブリッシャーも数多く加盟している、アメリカに本拠を構えるESA(Entertainment Software Association:日本でいうCESAに該当するような企業連携協会のアメリカ法人組織)は、WHOがゲームへの依存障害を疾病と指定することに対し、「ビデオゲームに中毒作用はないと客観的に証明されている」として抗議する内容をネット上で発表し、WHOの発表を見直すように求めた。
現状は「ゲーム依存」「障害疾病」に関する定義はなく、WHOがさまざまな国の事例や症例を総合することで統一された「Gaming disorder」の定義や治療方法が生み出されるのかもしれない。
しかし、各ゲームのジャンルやプレイスタイル、年齢層、背景などが異なるものを総合的にどのように判断するのかがとても興味深い。仮にそれらが定義されたとしても、疑問が多く残るような気がする。
要するに、ゲームに限らず、特定のジャンルへの「依存」の度合いが「治療」の尺度になるのではないかと思う。WHOの発表は、今後規定されるガイドラインへの事前告知であるが、今後の動向に注視したい。
しかし、このような賭博やゲームへの過剰な入れ込みは、本人にとってはあまり意識するほどの悲劇性がないところがむしろ問題だ。
周囲の家族、友人などをも巻き込んだ状態、もしくはなけなしの財産を家人の承諾なしに投下し、落ちるところまで落ちるという悲劇のスパイラルがいつの時代も取りざたされる。
しかし、実際のところ、そこまで熱中するのならば、ゲームとともに本懐を遂げるのも本人にとってはハッピーなことなのかもしれない。
人生を何にささげるかという個人の問題でしかないかも知れないということ……などと考えていたのだが、その途中で、広瀬隆氏の著作小説『赤い盾 ロスチャイルドの謎』のことを思い出した。まあ、明確な理由はないが、なんとなくだ……。
おそらく、今回のアナウンスが、海外主導、世界的な権威団体、不利益情報、ガイドラインなどが頭に浮かんだせいだろう。
小説『赤い盾』はユダヤ家系の金融一族ロスチャイルド家の過去から現代への系譜を綴った作品。金融、重工業、薬事、エネルギー・食品などさまざなジャンルでの水面下コングロマリット的な一族のつながりを描いている。
みなさんの身近なところでは、有名なワイン「シャトー・ムートン・ロートシルト(赤い盾)」がよく知られるものだろう。
うまくは言えないが、今回のWHOのアナウンスは、ちょっと大げさな問題提議のような感じがするのだ。それこそ、すでに行き詰まった世界の中で、新しい産業構造、新しい病理ビジネスを目論んでいるのではないかと思ってしまったのだ。
この点に関しては、WHOは、あくまでも人間生活の健康管理をベースにしていると信じるべきなのだろうが、このようなアナウンスが出ること自体、人類は局地的には平和で、成熟した文化を持つに至ってしまったのだろう。
そう、あと数年したらゲーマー同士の会話で、「中毒用のクスリ飲んだ」とかe-Sportsにおけるクスリの「ドーピング問題」が出るかもしれない。
……いやいや、笑い話じゃないよ。