【西川善司のモバイルテックアラカルト】第30回: ZenPad 3 8.0は大画面スマホとして使えるか?

Zen回、じゃなかった前回は、ASUSの10インチAndroidタブレット製品「ZenPad 3S 10」を評価しましたが、今回はスマホとしても使えそうな8インチタブレットのお話です。

大画面☆マニアが気になるスマホ

「6インチ未満のスマホには興味なし」のボクが気になるスマホとしてASUSの「ZenFone 3 Ultra」(6.8インチ/1,920×1,080ピクセル)の評価を以前から希望していました。

しかし、貸出機の都合がつかないということで、スマホではないタブレット端末の「ZenPad 3S 10」が貸し出されたのでした。

今回こそは、ZenFone 3 Ultraの都合がつくか……と思いきや、またダメだったみたいで、今回は8インチのAndroidタブレット製品である「ZenPad 3 8.0」(Z581KL)がやってきました。

ただ、今回はタブレットとはいえ、音声通話契約SIMを使って「電話ができるタブレット」ですから、拡大解釈して「8インチの大画面スマホ」という捉え方ができなくもありません。

ZenPad 3 8.0のスペックをチェック

まずはZenPad 3 8.0の基本スペックから見ていきましょう。

画面サイズは正確には7.9インチで、日本人が大好きなIPS液晶を採用しています。

解像度は2,048×1,536ピクセルで、前回紹介したZenPad 3S 10と同じです。1,024×768ピクセルの縦2倍、横4倍の解像度なので「QXGA」とスペック表では呼称されています。

この7.9インチ、QXGA解像度という組み合わせは、アップルのiPad Miniシリーズと同じです。

前回の9.7インチ、QXGA解像度のZenPad 3S 10が、同じくアップルのiPadと同スペックですから、これは、もう明確に「オレたちはオマエらのライバル」と宣言している感じです。

QXGA解像度ということで、画面アスペクトもZenPad 3S 10と同じく4:3です。

最近のスマホの、16:9ないし16:10といったワイドアスペクトになっていません。

なので、縦持ちすると、最近の16:9アスペクト主流のスマホと比べると明らかに「太めのフォルム」になります。

プロセッサ(SoC)は、Qualcommの「SnapDragon 650」(最大1.8GHz駆動)で、CPUはCortex-A72×2コアとCortex-A53×4コアの6コア(ヘキサコア)構成。

GPUはAdreno 510です。製造プロセスは、最先端の20nm以下ではなく先代レベルの28nm。

プロセッサのグレード的にはアッパーミドルといったところで、位置付け的には前回紹介したZenPad 3S 10と同等という感じです。

メインメモリ(RAM)は4GBでじゅうぶん……どころか、2016年のスタンダード仕様なタブレット製品群よりも多めです。アプリをかなり同時起動してもサクサクと動いていました。

内蔵ストレージはeMMCが32GBですが、128GBのSDXCカードを挿入して使うことができますから、不満はありません。

充電や通信用の接続コネクタは、これまでのAndroid端末定番のmicroUSBから、USB TYPE-Cになっています。

給電・通信接続端子はUSB TYPE-Cに対応。上下不問で挿せるので便利は便利。これからはこれが主流になっていくのか

バッテリー容量は4,680mAhの大容量仕様です。

ZenPad 3S 10の使い勝手や性能を、そのまま8インチサイズに凝縮したような仕上がりという印象ですね。

ZenPad 3 8.0の通話機能を試す

「6インチ以上のスマホを追い求める」ミッションに取り憑かれているボクとしては、まず気になったのは「ZenPad 3 8.0が、電話機としてちゃんと使えるのか」という部分です。

SIMスロットは、正面左側にあり、特に器具も不要でカバーを外せるので簡単にSIMカードの脱着ができます。

SIMスロットはMicroSIMに対応します。最近はNanoSIM化が進んでいますが、「あえてのMicroSIM」という感じですかね。

ボクも今年初旬に契約したFREETELの「KIWAMI」もMicroSIMでしたので、すんなりZenPad 3 8.0に挿入することができました。

ちなみに、SIMスロットの横にはmicroSDカードスロットがあり、こちらも簡単にアクセスができます。

SIMスロットはMicroSIMに対応。SDXCカードは128GBにまで対応

実際に、電話をかけて通話を試してみました。

ZenPad 3 8.0は「端末を耳にあてがう電話スタイル」での通話には対応しておらず、「画面に向かって話すスピーカーフォンのスタイル」での通話でした。

なので、通話中の音声は、周囲にダダ漏れにはなります。聞かれたくない話をする場合には、Bluetoothヘッドセットなどを利用した方がいいでしょう。

Bluetoothは4.1に対応していますから、市販されているヘッドセットはほぼ間違いなく、すべて使えるはずです。

今回の通話テストは、静かな屋内で行ったこともあって、相手からの声はかなり鮮明に聞こえました。

一般的なノートパソコンの内蔵スピーカーよりも鮮明に聞こえるほど高音質です。

音声通話に対応。通話は「耳にあてがう」式ではなく、スピーカーフォンスタイル

スピーカーフォンのスタイルだと、気になってくるのは、音声のエコー現象です。

今回の通話テストの相手に聞こえ具合を確認してみたところ、「話し声自体は鮮明に聞こえる。ただし、自分の声がアナタの話し声と共に約0.5秒~1.0秒くらい遅れて聞こえる」とのことでした。

ハウリングは起こさないまでも、スピーカーから鳴っている通話相手の音声をZenPad 3 8.0の通話マイクが拾ってしまっているようです。

これは、屋外などの、雑音の多い場所での通話には障害となるかもしれませんね。

ゲームプレイでバッテリー保ちを実感

前回のZenPad 3S 10のときと同様、10日ほど普段使いをしてみました。

まず、よくプレイする『Ingress』と『Pokémon GO』(以下、ポケモンGO)についてのインプレッションです。

前回、ZenPad 3S 10の画面が大きいことで、Ingressでアイテムをゲットするために挑戦するタイムアタック的なミニゲーム「Glyphハック」が不利なことが判明しました(笑)。

今回のZenPad 3 8.0では、ZenPad 3S 10よりはマシなものの、やはり大きい分大変でした。

ポケモンGOは、ZenPad 3S 10では、片手持ちだと親指が画面下部中央のモンスターボールに届きませんでしたが(笑)、ZenPad 3 8.0では指を伸ばせばなんとか届きます。

ただ、ボールを遠くに投げるために、大きく指をスライドさせるのはやはり片手では無理で、両手持ちにならざるを得ませんでした。

画面内に指を走らせる必要なあるゲームは、7インチくらいまでがちょうどいいような気がしてきました(笑)。

この他、いくつかのアプリをいろいろ使っていて気がついたのは、ZenPad 3 8.0もZenPad 3S 10と同等かそれ以上にバッテリーの保ちがいいことですね。

まぁ借りた評価機なので、バックグラウンドに動作させているアプリの数が、使い込んだ自前のKIWAMIよりもだいぶ少ないという事情もあるかと思いますが。

2時間くらい屋外を徘徊しながらIngressとポケモンGOをプレイしても、バッテリーはじゅうぶん足りている感じです。

同じコースをKIWAMIで徘徊するとバッテリー切れスレスレになりますから、ZenPad 3 8.0の大容量バッテリーは伊達じゃないんだと思います。

アスペクト比4:3は電子書籍と相性がいい!?

前回も触れましたが、最近、特にAndroid端末で利用率が高いのが、KindleとYouTubeです。

ボクは、電子書籍リーダーのKindleで漫画コンテンツをよく読んでいます。

ZenPad 3S 10については、前回「10インチの画面サイズはコミックス単行本を見開きにしたサイズとほぼ同じくらい」ということで、横画面で見開き2ページ表示で読んでいました。

でも、ZenPad 3 8.0では、2インチ小さくなった分、同じ事をやるとやや「小さくなった感」が否めませんでした。

ただ、ボクの私物である、同じく8インチ画面サイズのHUAWEIの「MediaPad M2 8.0」よりは、見やすかったです。

左上がZenPad 3 8.0、右上が私物のMediaPad M2 8.0、下も私物のKIWAMI。ZenPad 3 8.0の画面アスペクト比4:3は電子書籍の見開き閲覧向きか。ワイドアスペクトの他2機種よりも大部余白が少なく表示できているのがわかる

その理由は2点あります。1つは、画面解像度。

ZenPad 3 8.0は、ZenPad 3S 10と同じ2,048×1,536ピクセルで、MediaPad M2 8.0よりも高解像度。

そのため、横画面・見開き2ページ表示でも、じゅうぶんに精細な表示が得られていました。

ZenPad 3 8.0は横画面・見開き表示にしても1ページあたり1,024×1,536ピクセルあるのに対し、MediaPad M2 8.0ではこれが960×1,080ピクセルになってしまいますからね。

2つめは、画面のアスペクト比。最近主流のアスペクト比16:9の映像を見る際、アスペクト比4:3のZenPad 3 8.0では、上下に余白が出てしまいます。

でも、電子書籍の場合は見開き2ページ表示にすると、ZenPad 3 8.0のアスペクト比4:3と相性がよく、画面一杯に表示してくれるのです。

ということで、ZenPad 3 8.0の評価中、漫画コンテンツは、画面の小ささが気になるときのみ縦画面・1ページ表示で読み、そうでもないときは横画面・見開き表示で読んでいました。

横画面でステレオサウンドが楽しめるZenPad 3 8.0はYouTube向き?

そして、YouTubeです。

前回も紹介しましたが、ボクはYouTubeでカプコン製の格闘ゲーム『ストリートファイターV』の有名プレイヤーの動画を見るのにハマっています。

仕事と仕事の合間の待ち時間にも見ますし、トイレや寝入る直前のベッドの中でもよく見ています。

最近、ストリートファイターV以外のゲーム動画も見出しまして、特に見る頻度が高くなっているのが、「高田馬場ゲーセンミカド」の動画です。

ここはゲームセンターなのですが、常連客や著名プレイヤーが参加する格闘ゲームの大会を定期的に開催していて、その模様を実況付きで配信しているんですね。

さすがに生配信は見たことがないですが、過去の大会がアーカイブビデオとしてアップロードされていて、かなり楽しめます。

特に面白いのがSNKの格闘ゲームをフィーチャリングしたゲーム大会の様子です。

具体的にいえば『THE KING OF FIGHTERS』とか『餓狼伝説』、『サムライスピリッツ』などのシリーズですね。

左上がZenPad 3 8.0、右上が私物のMediaPad M2 8.0、下も私物のKIWAMI。アスペクト比4:3のレトロゲームの映像は、ZenPad 3 8.0だとフル表示に出来るため、同じ8インチ画面サイズでもZenPad 3 8.0の表示はMediaPad M2 8.0よりもだいぶ大きく映る。ZenPad 3 8.0はレトロゲームYouTube視聴向きともいえる?(笑)

ここで開催されるゲーム大会のルールがユニークで「ハングアップ(フリーズ)、リセットを誘発するバグ技はNG。それ以外の永久パターン技、ハメ技はOK」なんです。

それまで、「永久パターン技、ハメ技」の単体動画は見たことはありましたが、実戦式の大会でそうした技を使いこなす様を見るのは初めてだったので、最初見たときは衝撃でした。

「永久パターン技」「ハメ技」とひと口にいいはしますが、ゲーム開発側がデバッグで見つけられなかったものですから、実際に出すためには相当のテクニックが必要です。

それらを使いこなすプレイヤー同士が闘うゲーム大会というのは、かなり異色で楽しげなんです。

実況を担当する人も相当な有識者なので、その解説に聞き惚れることもあります(笑)。

SNK以外のタイトルを扱うことも多いので、1990年代から2000年代前半までの格闘ゲームが好きならば相当楽しめるのでおすすめです。

最近、見たものの中で特に衝撃的だったのは『THE KING OF FIGHTERS 2000』を片手でプレイするゲーム大会です(笑)。

おそらく、このゲーム大会の優勝者の名人KANAさんに対して常人は両手プレイでも勝てないと思います(笑)。

片手でプレイしているとは思えないハイレベルプレイヤー同士の戦いに衝撃を受ける(笑)。片手プレイはe-Sports種目に付け加えるべきか!?

というわけで、ZenPad 3 8.0を試用期間中は、ストリートファイターV関連YouTubeと同じくらい高田馬場ゲーセンミカドYouTubeを見ていました。

ZenPad 3S 10と比較すると画面サイズは小さいですが、ZenPad 3 8.0の画面解像度はZenPad 3S 10と同等なので、解像感はじゅうぶんです。

画面アスペクトは4:3ですが、解像度が2,048×1,536ピクセルありますから、横画面表示にしても1,920×1,080ピクセルのフルHD動画は劣化なしのリアル解像度で表示できます。

重量もZenPad 3S 10の約430gよりも100g以上軽い約320gなので、ベッドで寝転びながら持って見る際にも負担も少なめです。

動画を楽しむ上で、ZenPad 3 8.0が、ZenPad 3S 10よりも優れている部分が1つありました。それはスピーカーです。

スピーカーは横置きしたときに左右に配置されるようにデザインされている。ここは、ZenPad 3S 10よりも個人的に気に入った部分。音質は良好

ZenPad 3 8.0も、ZenPad 3S 10も内蔵スピーカーの音質が良好なのはいっしょなのですが、スピーカーの配置が大きく異なっています。

ZenPad 3S 10では縦画面時の下辺側にステレオスピーカーが付いているのに対し、ZenPad 3 8.0の方は横画面時の左右にステレオスピーカーが実装されているんです。

つまり、横画面で動画を楽しむ際、ZenPad 3S 10では片側からしか音が鳴らないモノラル再生になってしまうのに対し、ZenPad 3 8.0はちゃんとステレオサウンドを楽しめるんです。

これは、細かいですが大きな違いだと思います。

また、ZenPad 3 8.0のバッテリーの保ちはYouTube視聴でも実感できました。

ベッドで寝入る前にYouTubeを見ていると、そのまま寝落ちしてしまうことも多いのですが、5~6時間くらい寝入ったあと目を覚ましてみたら、ゲーム動画がそのまま連続再生されていたことがありました(笑)。

おわりに

ボクが今夏MediaPad M2 8.0を購入したのは、メインのスマホ修理期間中に「MicroSIMが挿さって、通話もできるタブレット機器」の選択肢としてこれしかなかったから……というのは前回お話ししたと思います。

しかし、もし、ZenPad 3 8.0があの時点で発売されていれば、間違いなくこちらを選んだと思います。

「通話に対応していること」「MicroSIMが挿さること」を満たしていますし、8インチという画面サイズも手ごろで、解像度がフルHD以上あるのも魅力です。

プロセッサの性能も良好ですし、バッテリーの保ちもZenPad 3 8.0の方が上ですしね。

ボクのように「万が一のときには、スマホの肩代わりをしてくれるタブレット機」としてはZenPad 3 8.0はかなりおすすめだと思います。

ZenPad 3 8.0に対する要望を1つ出すとすれば、ZenPad 3S 10のような実体型のホームボタンと指紋認証機能ですかね。

ZenPad 3 8.0では「ASUS」のロゴが、画面下部にけっこう幅をとってあしらわれているのですが、ZenPad 3S 10では、この部分が実体型のホームボタンになっていました。

ZenPad 3S 10では、このホームボタンの使い心地がとてもよかったので、ZenPad 3 8.0にもほしいと思いました。

前回評価したZenPad 3S 10は、個体差のためか指紋認証機能に不具合がありうまく試せませんでしたが、前述したホームボタンにこの機能が搭載されていました。

ボクが今メインで使っているKIWAMIにも指紋認証機能がついていて、待機状態であっても、指紋リーダー部分に指を当てれば瞬間的にホーム画面に移れるのでとても便利なんです。

もし、後継機があるとすれば、このあたりの要望が汲まれればいいなと思っています。

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