[黒川文雄のゲーム非武装地帯] 第26回: 2016年はどんな年だったのか?

11月後半から始まった、インターネットにおける、いわゆる「まとめサイト」またの名を「キュレーションサイト」における非常識かつ悪質なSEO対策による集客と、情報剽窃による騒動はDeNAが運営する各サイトの閉鎖に留まらず、同様のサービスを展開する他社も巻き込んでのものとなり、それらの情報そのものへの信頼性を大きく損なうものとなった。

とばっちりを受けたそれらサイトに瑕疵があったかどうかはわからないが、疑わしきサービスは批判を受ける前にいったんクローズして精査、または炎上してからでは遅いので今のうちに対策をしておこうということだろう。

とはいえ、おそらく類似したサービスは後を絶たないだろう。

人間は弱い生き物です

これらのサービスで感じるの人間は、自分にとっていい情報は探すが、悪い情報は目にしたくないというエゴも要因の一端になるのではないだろうか。

もしくは、そこに付け込んだ情報提供サービスと言い換えてもいいだろう。

誰しもにあるはずの「約束の地」は、ネット上のキュレーションサイトにあるわけではなく、常に自分の日々の生き方や努力の彼方にあるものということを我々は改めて認識をしないといけないのではないだろうか。

スマホゲーム約束の地

この連載が始まったのは2016年1月18日で、年越しをすれば1周年になる。編集スタッフ、そして読者のみなさまに改めて御礼を申し上げたい。また、新年度も引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。

さて、このコラムではスマホゲームを中心にしたテーマで展開してきたが、ざっと振り返るとスマホゲームコンテンツと市場に関してはやや閉塞感を感じる1年だった。

正確な数字は不明だが、首都圏ではスマホの普及率が7割を超えたという調査もある。おそらく、買い替え需要も伴って、ガラケーからの乗り換えも急速に促進したといっていいだろう。

2016年にも、数多くのゲームがローンチされた。しかし、1年を待たずにサービスが終了するものも見受けられ、「とりあえず、スマホ買ったから何かダウンロードしておく」というモチーベーションが、徐々に遊ばない、使わないから削除するというアクションに移り変わってしまった。

また、ヒットコンテンツの類似(よく言えばオマージュ)作品が、最後の勝負をかけたのも2016年の特徴だった。

「どこそこの会社でヒットコンテンツを創った人」とかが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)したのは今に始まったことではない。

しかし、各社のリストラの中であふれたこのような「自称クリエイター」「自称プロデューサー」が資金的に余裕のある会社に近づき「あのコンテンツの亜種を1作品いかがでしょう」という事例も目に付いた。

大手スマホゲームパブリッシャーでさえ、営業利益ベースで昨年度割れに陥っている会社が多い中で、大げさな企画書と過剰な予算計画で描いた「約束の地」はいったい全体どこに行ってしまったのかというのが実情だ。

キュレーションサイトとスマホゲームの相関性

冒頭に挙げたキュレーションサイトの問題もそうだが、とにかく儲かればいいとか、集客ができればいいというエゴイスティックな企業側、コンテンツプロバイダー側からの押しつけが見破られつつあるのが現状ではないだろうか?

「今、ガチャ廻さないとゲットできません」「期間限定」「(入手)確率アップ!」「レアアイテムです」などの広告宣伝に煽られて散々課金したが、結局、彼ら課金者はコンテンツプロバイダー側にしてみれば重要な資源(資産)であり、なんとかなだめすかしながらも重課金者から長期間搾り取ってきたという実態が明らかになったのではないだろうか。

ちなみに、先に挙げたキュレーションサイトでの問題の発覚は「死にたい」という検索ワードでヒットするのが健康サイトだったという事例で、死のうと考える人からも金銭を搾り取ろうというか?と いうことに端を発している。

話を戻すと、今まではゲームを純粋に楽しもうと思っていたところが、人間の心理や競争原理を盾に徐コンテンツプロバイダー側の施策、または運営のうまさで課金をせざるを得なくなっていったということではないだろうか。

死しても生きる岩田聡氏の再定義

しかし、そんなユーザー側の意識の変化は、7月に日本でサービスが開始された『ポケモンGO』によってもたらされたのではないだろうか。

ユーザーが自ら行動することで、自らの意志でゲームをコントロールすることができること、そして課金しなくてもじゅうぶんに自分のペースで楽しむことができる。

とはいえ、一方で、ユーザーの身勝手な使用環境や方法が原因で死亡事故や不慮の事故が起こることはとても残念なことだ。

そして、この原稿を書いている12月16日未明(日本時間)には、『スーパーマリオ ラン』の配信が世界151ヵ国で始まった。

本作に対する反応はさまざまで、「面白くない」「すぐに削除した」「課金(購入)しない」という声もSNS上に見受けられる。

でも、個人的には「マリオってこういうゲームだったよね」という既視感と、スマホでそれが再現されたことのよろこびが湧いている。

おそらくスマホでゲームに慣れた世代とそうでない従来型の家庭用ゲーム世代間のギャップのようなものがあるのかもしれない。

さて、年末を華やかなに彩るマリオワールド。課金への考え方、任天堂の岩田氏が考えたゲームの再定義はどのようにユーザーに判断されるのか? その再定義の答えは2017年初回の1周年コラムで触れてみたい。

みなさまにおきましても、よい年末年始ゲームをお過ごしください。

(c)2016 Nintendo