DeNAのアレンジ開発コンテンツ
任天堂が「ゲームの再定義」と位置付けた、スマホ向け『スーパーマリオブラザーズ』のDeNAアレンジ開発による『スーパーマリオ ラン』。
アレンジ開発と書いたのは、マリオのコンセプトを基にDeNAがスマホとしてのエッセンスを盛り込んでオリジナルを現代風にアレンジしたという主旨だ。
故・岩田氏が発表会でコメントしたゲームコンテンツとしての再定義とは、『スーパーマリオ ラン』のことだったのだろうか?
コンテンツの完成度と荒れるアプリレビュー
ネット上の書き込みやアプリのレビュー欄を見ても、あまり好意的な意見は見受けられない。そう、どちらかといえば「買って損した」「期待していたが……」「高い」などの声が並ぶ。
その一方で、「理不尽な文句が多い」「1,200円でこのレベルのゲームが遊べることに驚き」という肯定的な評価もある。
ただし、全体を通して見ると、2:8ぐらいの割合で星が少なめの評価が多いような印象を受けた。
私個人としては、縦持ち、横スクロール、強制ランゲーム、ワン(フィンガー)アクションという部分では大変よくできたゲームコンテンツだと評価している。
確かに難易度は高いという声もあるようだが、じゅうぶんにゲームとしての完成度は保たれているコンテンツだ。
難易度に関しては、Android版が配信されるタイミングで、どちらもチューニングされていると再度活性化につながるのではないだろうか。
ダウンロードのピークは3日だった?
販売開始から1ヵ月になろうというタイミングを迎えるが、すでに販売動向は鈍化しているように感じる。とはいえ、調査会社の資料などによると、導入日から3日間で1,400万ドルの売り上げに達しているという(ダウンロードしたユーザー数は3日で4,000万人を越えている)。
ただし、これらはあくまでも調査会社の資料なので参考程度に考えるべき数値だろう。
それらを基に、1,200円の日本国内価格で円ドルのレート(116円前後)で3日間の売り上げを換算すれば、1400万ドル=16億円、ダウンロード単価から逆算すれば約130万人強がダウンロード購入をしていることになる。
初速としてはじゅうぶんだが、その後の伸びは鈍化していると思われる。
それを見込んでか、年末年始に任天堂がテレビスポットを大量に投下したことはお気づきのことだろう。とはいえ、3ステージを終了すると1,200円での購入を促されることに関してはずいぶんと抵抗があるようだ。
販売価格の再定義
私が関わったことのあるソーシャルゲームの月次ARPPU(課金ユーザー1人あたりの平均売上金額)は、3,000~4,000円のコンテンツが多かった。
とはいえ、コンテンツの内容によって前後するため、平均的なARPPUは一概にはいくらとは言い切れない。だが、一般的には、これらのARPPU金額設定をベースに月次の売り上げ計画を立案していた。
つまり、毎月3,000円程度をユーザーが拠出するモデルが一般的なソーシャルゲームである。
しかし、『スーパーマリオ ラン』は一律1,200円のダウンロード課金ですべてのステージやゲームバリエーションが解放されるモデルである。良心的なモデルであると認識するのはこちらがお人好しすぎるのであろうか?
スマホのゲームで数千円、数万円単位で課金してきたユーザーが、1,200円で「高い」と叫ぶのは理解しにくいものがある。想像でしか語れないが、たとえば、ステージクリアごとに少額課金だったらもうすこしユーザーの理解を得られたのではないだろうか。
ライフスタイルとライフサイクルの変化とコンテンツの寿命
さらに私見になるが、任天堂は年齢層や性別、国別問わず、誰にでもフェアに遊んでもらえる玩具的なエンタテインメント・コンテンツを提供する会社だと思っている。
今回の『スーパーマリオ ラン』のようなフラットな価格でのコンテンツダウンロード販売は、任天堂として正しいありかたとして推進したはずだ。
そして、そのためのスマホでの価格の再定義としての並み居るメジャーパブリッシャーの代表として市場に一石を投じたことは評価に値する。
しかし、「マリオ」というキャラクターとそのゲームスタイルが生まれてすでに30年の月日が経過した。
人々のライフスタイルや世代のライフサイクルは一巡したと思われる。その点を加味したものがスマホをベースに新たに生み出せなかったことがいちばんの誤算ではなかっただろうか。
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