Strange Telephone【ゲームレビュー】

ドット絵による不気味な雰囲気が印象的なアドベンチャー『Strange Telephone』。タイトルにある「Strange」(奇妙な)のとおり、奇妙としか表現しようがない世界から抜け出すのがプレイヤーに課せられた使命となっている。

電話を通じて約300万の世界をさまようアドベンチャー

本作は、6桁の電話番号で自動生成される約300万のワールドをさまよい、元の世界へ抜け出すことを目指す横スクロール型のアドベンチャーゲーム。

インディーゲーム開発者のyuta氏が2年の歳月を掛けて制作したタイトルで、2016年に開催されたBitSummit 4thにも出展されていた。

基本的なゲーム性は、さまざまな番号に電話をかけてアイテムやヒントを見つけながら、5つ用意されているエンディングを目指す、脱出ゲームのようなもの。

ただし、約300万という膨大な数のワールドを行き来することになるため、SNSでの番号の共有が推奨されている。ほかの脱出ゲームとは異なる楽しみ方も体験できるアドベンチャーだ。

提示されるルールはこちら。リストの番号がおかしいのも、何かのヒントになっている……?

迷い込むのは悪夢のような世界

物語は、主人公の女の子「ジル」が、大きな扉が浮く奇妙で暗い世界で目が覚めるところからスタート。

まずはすぐ近くにあるランタンを手に取り、周りを明るく照らすことから旅を始めていく。

ゲーム開始直後、辺りは暗く、何もわからない状態。説明がないので何をすればいいかわかりにくいが、まずは左の方にうっすら見える「太陽のランタン」を取得しよう。移動やアイテムの取得、オブジェクトの調査は、すべてタップで行う

手に入れたアイテムは、アイテム一覧から装備や使用を行う。ランタンを装備すれば、目の前に大きな扉が現れる

ここからは、画面右下にある「電話をする」ボタンから電話をかけ、約300万通りの世界を行き来してエンディングを目指していく流れだ。

ちなみにこの電話は、ジルのそばで浮いている電話「グラハム」。

グラハムは、BitSummit 4thで展示されていたバージョンではしゃべっていたが、製品版ではセリフはなくなっている。

電話番号は0~9、#、*から成る6けたの番号で、正確には2,985,984通りとなる

最初は手掛かりがまったくないため、適当な番号にかけていく。

その先に待っているのは、この世のものとは思えない謎のオブジェクトや、おとぎ話に出てきそうな空間、ベッドやデスクが並んだ部屋など。どれも不気味な雰囲気が漂っている。

例えば「123456」という番号へかけると、目玉がついた木の枝のようなものがポツンとたたずむ空間へ移動する

そのほか、さまざまな空間へ移動してアイテムを手に入れたり、使ったりしてエンディングを目指す

約300万通りと聞くと、途方もなく感じてしまうかもしれないが、もちろんそのすべてに行く必要はないし、すべてがまったく異なるわけでもない。細かな部分が違っているだけのほぼ同じワールドが大多数を占めている。

運がよければ順調にアイテムを手に入れ、エンディングまであっという間に進むこともあるかと思うが、おそらくは不思議な世界をさまよう羽目になるだろう。

また電話番号によって移動するワールドは、全プレイヤー共通となっている。闇雲に手がかりを探し続けるのもいいが、ほかのプレイヤーと番号を共有して攻略していくこともできるのだ。

Twitterではすでに「#StrangeTelephone」のハッシュタグを使って、さまざまなプレイヤーが自分の得た情報を共有している。

中には、全エンディングまでの道のりを記載しているユーザーもいるため、自分の力でエンディングまでたどり着きたいユーザーは注意してほしい。

周回プレイが苦にならないテンポ

約300万のワールドを探索して周るというゲーム性で、似かよったワールドも多いことから、ストレスを感じてしまうのではないかと思うが、1つのワールドを調査するのは数分程度。

ものによっては1分と掛からないだろう。

また、ワールドを行き来しているうちに、左上に表示されている「CLITCH(故障、欠陥の意)」の数値が上昇していく。

これが5に達すると、ゲームオーバーとなってしまう。

GLITCH値がたまってくると、徐々に画面内にノイズが発生していき、最終的にゲームオーバーとなる。ちなみに、普通にプレイしていくと行き着くために明かしておくが、これも5つのエンディングのうちの1つだ

ゲームオーバーになってしまっても、取得したアイテムは所持したまま、1からやり直すことができる。そのため、再び進めるモチベーションを落とさずにプレイすることができた。

「強くてニューゲーム」さながらに、アイテムを引き継いで2周目以降をプレイできる。もちろん、別のセーブデータを作成して、すべてを1からやり直すこともできる

アップデートでさらなる世界が広がる?

ワールドの数そのものは約300万と非常にボリュームがあるが、実際にはそのバリエーションの少なさは否めない。

とはいえ、無数とも思えるワールドからアイテムやヒントを断片的に集め、謎を解いていく面白さは、ほかのアドベンチャーや脱出ゲームでは体験できないと感じた。

開発者であるyuta氏のTwitterによると、マイナーアップデート、ボリュームアップ、新要素の実装、メジャーアップデートを予定しているとのことなので、本作はまだまだ完結していないと言えるだろう。

また、ドット絵の主人公ジルとグラハムのかわいらしさや独特の雰囲気からか、プレイした人も心をガッツリつかんでいるようで、Twitterではイラストなどのファンアートが次々に投稿されている。

二次創作のガイドラインもきっちり定めていくと明言しており、インディーゲーム発の大きなムーブメントとなるかもしれない。

  • 使用した端末機種:iPhone 6s Plus
  • OSのバージョン:iOS 9.3.2
  • プレイ時間:約8時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.0

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