【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

『楽天家は、困難の中にチャンスを見い出す。悲観論者は、チャンスの中に困難を見る。』 ーウィンストン・チャーチル

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■前回のあらすじ

前回のブログはこちらから。

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ダイジェスト版。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

リアルもゲームも現実逃避のケンラウヘル。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

そんな最中闘うことになった言葉の花最強サークル、極限男女。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

援軍が欲しくとも言えない張り詰めた雰囲気。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

言いたいことも言えないこんな世の中じゃ

ーPOISON

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■戦闘開始

【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

だが、よくよく考えてみる。

人数がいたから今まで我の拠点は守り切ることができていたのであろうか。

当然皆の力がなければ何もできないのは間違いない。

そこは否定するまでもない。

この3ヶ月で培ってきた拠点防衛スキルはただのお飾りだったのだろうか?

人数だけの問題であり、人数さえいれば防衛できるのだろうか?

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違う、こういう不利な状況こそ我がこのVVIPに恩返しできる唯一無二の機会。

逆に考えると、状況的に有利な時ではなく、不利な時こそ我自身がサークルから求められている時なのではないか。 

戦闘開始まで10秒を切っていた。

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「自軍左、散らばってカットに集中、取らなくていい、取らせるな」

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短く檄を飛ばす。

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だがこれでもかと集まってくる極限男女の面々。

我の小隊よりも明らかに敵の数が勝っている。

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前回も話したが、我の小隊は中央を担う主戦メンバーでもなく、遊撃となって相手を揺さぶる力もない。

だが何度このメンバーで拠点を守り切ってきただろうか。

拠点確保という形ではなく、最小限の人数で敵の侵攻を食い止め、他の拠点を確保してもらうのが我小隊の役目。

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「とにかく固まらず拡散して全滅だけにはならぬよう」

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

それだけ言って我は物陰に隠れる。

敵戦力が強大なため、最短でも刻印されてもカットが間に合う位置にて息を潜める。

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これは一見姑息な手段と見られるかもしれない、堂々と勝負しろという意見もあるかもしれない、この姿を見て笑う者もいるだろう。

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だが我からすると今できる全ての最適解を実行に移したに過ぎぬ。

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■弱者の戦術

課金者はこんな戦い方をしなくて済むし、我くらいの戦闘力だったら鼻息ひとつで消し飛ばすことも可能だろう。

そんな課金をしていなくても、戦闘力がある程度あればもっと楽に戦えるだろう。

VVIPはトップサークルという位置にいながら、無課金で遊んでいる人も多数存在する。

勿論、そんなに戦闘力は高くない。

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昨今のMMOは如何せん、課金が戦闘力に直結しているというのは否めない。

それを否定するつもりもない。

戦闘力があった方が楽しいのは当たり前だ、ゲーム内で遊べるコンテンツの幅が大きく広がるからだ。

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では無課金や戦闘力が低いと楽しめないのか。

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答えは「否」、そんなことは決してないと断言できる。

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楽しめないのではなく、楽しみ方を見出す。

楽しみ方を見出しながら、さらにその過程を楽しむ。

これが我のMMOの遊び方だ。

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我もこのVVIPの弱者の1人に過ぎん。

サークルの方針によっては戦闘力で弾かれたり鼻つまみものになったりするところもある。

それは方針として従うべきだ。

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だがこのサークル、VVIPは重要な拠点防衛を、弱者の我に託した。

ならば弱者として堂々とそのオーダーに立ち向かうまで。

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弱者なりの戦い方というものをぶつけるのだ。

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「ここが粘ればチームは必ず勝つ、絶対に獲らせるな」

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その言葉を皮切りに、戦いの火蓋は切って落とされた。

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■開始直後の死闘

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開始直後から始まる拠点への攻撃。

敵味方の激しい攻撃エフェクトが画面を明滅させる。

今までにない規模の爆撃だった。

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敵の強者と思われる前衛部隊が我が小隊のラインを押し上げ、みるみると減っていく小隊のメンバー。

そのライン最前線の後ろで刻印を狙う敵の侵攻部隊。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

そうはさせまいとボイドを使って敵の拠点周りを掻き乱す。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

離れては月光での設置型範囲攻撃を置いて刻印カットを続ける。

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不利な状態であれ、全滅を避けるように広がって闘う小隊たち。

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「リスポーン地点はこちらの方が近い、ここを耐えるんだ、もっと広がって!」

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自軍側の拠点というのは自軍リスポーン地点に近い。

即ち、復帰時間がこちらの方が圧倒的に短く、長期戦になれば有利に働く。

当たり前のようなことだが、このアドバンテージをしっかりと周知させることで精神的に落ち着いて対処ができるようになる。

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最初の30秒で味方の大半が駆逐され、拠点は既に敵の手に落ちる寸前。

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普段だったら援軍を要請するレベルなのだが、相手は極限男女、どの局地においても余裕などどこにもない。

じわじわと拠点から前線が離れていくのを感じていたが、流石は小隊のメンバーたち、伊達ではない。

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前線から少し離れたところに共生たちが回復フィールドを多重展開、ベースキャンプを作ってヒットアンドアウェイをよりしやすくする。

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ここから情勢が変わっていく。

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赤一色だった画面が時間経過と共に徐々に緑色の、仲間のHPバーが占める割合が増えていく。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

局所的な形勢は逆転した。

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ここしかない。

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「カットで凌いで援軍を待つ」という作戦を破棄、自ら印を狙いにいく。

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「自軍左、ラインを押し上げ前へ、刻印を狙う」

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VCでは様々な場所の指示が混在する。

聞き取るのもなかなか難しい。

しかし我が優秀な小隊たちはしっかりとその声を聞き分け、いや、我が指示をする寸前から阿吽の呼吸でラインを一気に押し上げた。

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それと同時に吉報が舞い込む。

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「自軍右、獲った!」

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

さっきまで余裕のなかったVCの面々が何かに突き上げられたかのように称賛の言葉を口にする。

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「ナイス!」

「よくやった!」

「GJ過ぎ!」

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本来、指示以外の言葉はVCには必要ないのだが、一見無駄に見える鼓舞こそ数値では測り切れないほど絶大なバフ効果を発揮することがある。

それはゲームの枠を超えた絆が光り輝く糸のようなもの、その糸が紡がれていく過程が最高に脳汁が出るというものだ。

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乗るしかない、このビッグウェーブに。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

勝機と判断するや否や、拠点の自軍側に飛び込む。

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刻印を開始する。

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「自軍左刻印開始、全体前に出て交戦」

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この判断がパズルのピースのように相重なった。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

時刻をほぼ同じくして自軍側の拠点を占拠することができたのだ。

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活気の沸くVCとは裏腹に、我は任務を全うできたことに安堵していた。

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だが安堵は束の間の出来事。

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「右敵陣、人増えた!きつい!」

「左敵陣もかなりヤバイ!獲られそう!」

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同時に聞こえてきた報告に一気に緊張の糸が張り詰める。

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「自軍左は敵陣左へ展開!」

「自軍の右も敵陣右へ流れて!」

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我と共に自軍拠点の右の小隊長も同時に指示を飛ばす。

だが指示のタイミングが遅過ぎた。

いや、相手のスイッチのタイミングが早かったのかもしれぬ。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

自軍拠点を確保してたった50秒の間に敵陣双方の占領を許してしまう。

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決してVVIPの司令官が迂闊だったわけではない。

極限男女の切り替えと連携が一枚上手だった。

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拠点は先行で獲ることに大きなアドバンテージがある。

通常攻撃が一発でも当たればカットは成立する上に、そうやってカットを繰り返している間にも拠点から得られるポイントは着実に勝利への針を進めるからだ。

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全体の数は把握し切れていなかったが、決して数での優位を取っているとは言えぬ。

一方、質は明らかに相手の方が格上。

中央に至っては何とか耐えているものの、VVIPの主戦力を持ってしても、緩い傾斜に敷かれた線路の上を溢れんばかりの鉱物を載せたトロッコがゆっくりと下っていくかの如く、徐々に加速を上げてラインを押し上げられている。

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これでいて敵陣にいたメンバーが自軍拠点を襲ってきたらたちまち津波に飲まれてしまい、そこから土台が崩壊するであろう。

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だがしかし、そこで心折れるVVIPではない。

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誰かが叫んだ。

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「ポイント、先制してる!」

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各声出しメンバーの配置場所が全て熱戦だったため気づくのが遅れた。

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【コード:ドラゴンブラッド】極限男女との戦い 中編

VVIPが2拠点を制圧した時刻、そして極限男女が2拠点を制圧した時刻。

その時間の隙間にポイント更新が挟まったのだ。

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その差は端的に見ればいくらでも逆転できる、吹けば消えてしまうような心許ない火に過ぎぬ。

だがこの小さな火が、我々の心に火を灯したのだ。

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誰も口に言わなかったが、VVIPの心は一つになっていた。

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『死守』

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読んで字の如く。

まだ開始3分しか経っていないこの状況で受け身を選択するのは時として悪手にも成りかねない。

だが今まで何度も重ねてきた拠点防衛という行動が自信にも繋がっていたのも事実。

防衛の戦闘戦術、各指揮官の状況とそれに伴う判断、そしてそれらを合算して作り上げる目に見えぬ場所の戦況イメージ。

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開始から3分、求められる長時間の集中。

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このチャンスという種火を、絶やしてはならない。

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再び戦火は広がる。

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次回へ続く。