【西川善司のモバイルテックアラカルト】第48回: 大画面☆マニア「Galaxy Note8」を買う

ボクはスマホ専門のレビュアーではないため、常に最新スマホに触れているわけではありませんし、新製品スマホに買い替える頻度もそう高くはありません。ただ、そうはいっても、2年縛り契約の更新月とか、あるいは端末が壊れてしまったりすると、買い換えを検討することはあります。その際の「スマホ選び」については本連載の第10回、15回で触れたことがありました。実は、第15回の掲載から約2年が経った今、ボクはまたスマホを乗り換えることになったのでした。今回はそんな話です。

Galaxy Note8を選択するに至った経緯

今回、なぜスマホの買い換えを検討したかというと、今まで約2年間使ってきたFREETELの「SAMURAI KIWAMI」(以下、KIWAMI)の動作が2017年12月前後から安定しなくなってきたからです。

バッテリーの保ちが悪くなってきたのは経年劣化だとして、よく勝手に再起動してしまうことが多くなってきたのです。

初期化(リセット)しても症状が変わらないですし、この症状が出始めたのが、FREETELの経営破綻の報道前後だったので、修理に出すのも気が引けまして、結局「買い換え」を検討したのでした。

で、何にするかですが、ここが問題です。

ボクのスマホに対するこだわりは、この連載で幾度も書いてきていますが、あえて再び書きますと、重要なのは「大画面であること」そして「それなりに高解像度であること」です。

受話はそれなりにしますが、発話はあまりしないので、電話としての使い勝手は二の次です。しかし電話機能がないというのは困ります。

ちなみに、極端な話、通話できればタブレットでも構わないとは思っています。

本連載第25回「8インチタブ「MediaPad M2 8.0」をメインスマホとして使うことになったワケ」では、KIWAMIが故障して修理に出している間、携帯電話がなくて困ったので、通話できるタブレットを購入した……という話題をお届けしたこともありましたっけ。

さて、ボクにとって「具体的に何インチからが大画面なのか」といいますと、6.0インチからと勝手に決めています。

解像度は2,560×1,440ピクセルからですね。

2年くらい前ならばフルHD(1,920×1,080ピクセル)でもよかったかもしれませんが、長らく使っていたFREETELのKIWAMIが2,560×1,440ピクセルでしたから「これ以上にしたい」というのは絶対条件となりました。

そこで、いろいろと検討した結果、候補にあがったのはサムスンの「Galaxy Note8」、LGの「V30+」、NTTドコモの2画面スマホ「M(Z-01K)」です。

LG V30+(2017年10月のドコモ発表会より)

ドコモの2画面スマホ M(Z-01K)

ボクは大画面☆マニアであることは業界では有名ですが(笑)、同時に多画面☆マニアでもあります。

なので、M(Z-01K)はかなりほしかったのですが、発売が2018年2月。LGのV30+も1月でした。

西川善司の仕事場の多画面環境

購入検討をしていたのは2017年の12月でしたから、2017年12月の時点で購入可能なのはサムスンのGalaxy Note8一択と言うことになってしまいました。

まあ、もともとボクは人生最初のスマホが初代Galaxy Noteでしたし、ペン入力対応は魅力的に思っていたので、悪くない選択だと思い、決断したのでした。

Galaxy Note8への買い替えのタイミングで回線もMNPすることに

Galaxy Note8は、画面サイズは6.3インチ、解像度は2,960×1,440ピクセルというアスペクト比にして約2:1という縦長端末になります。

このドットピッチでアスペクト比16:9に換算すると約5.6インチくらいに相当しますかね。大画面といえば大画面なのですが、そうと言えなくもない微妙な縦長スマホという感じです。

映像パネルは有機ELパネルですが、サブピクセルが千鳥足配置(ペンタイル構造)になっています。

実効解像度は2,960×1,440ピクセルの約66%といったイメージですかね。

RGBサブピクセルのストライプ配置とペンタイル配置。高解像度有機ELパネルはペンタイル配置が多い

筆者のGalaxy Note8をデジタル顕微鏡で撮影した写真。ペンタイル配置であることが分かる

既に各メディアで報道済みなので、スペックについての言及は、軽くなぞる程度に留めておきますが、Galaxy Note8のSoC(メインプロセッサ)はQualcommのSnapdragon 835(MSM8998)で、製造プロセスは10nm LPP FinFETプロセスです。

まあ、すでに第2世代10nm LPP FinFETプロセスで製造されるSoCの予告もありますが、現行品としては最新製造プロセスによって製造されるもので、卓越した省電力性能と最大演算性能を両立していそうです。

CPUはARMの2命令デコードのスーパースカラパイプラインを採用したCortex-A73(2.35GHz)×4基と省電力コアのCortex-A53(1.9GHz)×4基の8コア構成。

GPUはAdreno 540で、最大理論性能値は710MHz駆動時で500GFlopsオーバー。ゲーム機のPS3のGPU(RSX)が224GFLOPSでしたから、その2倍の性能があることになります。凄い時代ですね。

内蔵ストレージは64GB。メインメモリは6GBもあり、Windowsパソコン並みですね。OSはAndroid7.1です。

実は、Galaxy Note8に決めたのにはもう1つ隠された理由があって、それはGoogle純正のVR(Virtual Reality:仮想現実)ソリューション「Google Daydream View」に対応していることが公言されていたことです。

Galaxyシリーズは、サムスン謹製の「Gear VR」というVRソリューションも提供されていますが、Google自らが提供するDaydreamにも対応するところが魅力的に思えたのです。ある種、スマホVRソリューションのダブル対応ですからね。

ボクは、VR関連技術も専門に追いかけていますから、スマホVRに広く対応しているGalaxy Note8は選択して間違いがないだろうとも思ったわけです。

このあたりについては後述します。

さて、第15回「2016年はFREETELのSAMURAI KIWAMI×MVNOにします」でお話ししたとおり、ボクは携帯電話回線はMVNOの「OCN モバイル ONE」を利用していました。

Galaxy Note8はSIMフリー版が並行輸入品しかなく、国内正規販売されているものは国内大手キャリア対応品のみです。

ただ、販売価格を見てみると新規契約で約76,000円、MNPで約26,000円でしたから、ここはMNPで契約することにしました。

月々の支払いは多少上がりますが、端末を安く入手できることで相殺されると考えることにしました。

ちなみに、「OCN モバイル ONE」は最低利用期間が半年(6ヵ月)ですから、違約金等は発生していません。MNP転出手数料の3,240円は掛かりましたが。

Galaxy Note8の使い勝手

Galaxy Note8の使い勝手ですが、全体的にプロセッサのパフォーマンスが高いため、「サクサクと動いて小気味よい」というのが第一印象です。

メインメモリが6GBもあるので、よく使うアプリをほぼ全起動してもオンメモリ動作してくれているようで、最初に起動したアプリを再び呼び出したとしても、そのアプリが再起動することなく、すぐにタスク復帰してくれます。

KIWAMIでは、いちばん過去に起動したアプリがよく再起動していたので、これが改善されたことには最初に気が付きました。KIWAMIも、当時としては最大級のメインメモリ4GB仕様だったんですけどね。

ボクは日本語入力は「JISかなキー配列」入力派なので、ソフトウェアキーボードアプリ「nicoWnnG IME」を使っています。

このアプリでは、文字入力の際に「かな」キー配列のソフトウェアキーボードがスマホ画面に表示されるのですが、画面を縦長持ちにしたときには、画面の横幅が事実上のキーボードの横幅になり、これが狭いと、キーごとの幅も小さくなるためタッチ操作では押しにくくなります。

KIWAMIの本体寸法はH159.5×W82.9×D8.9(mm)で、横幅は82.9mm。対してGalaxy Note8はH163×W75×D8.7(mm)で、横幅は75mmとなり、Galaxy Note8は狭額縁デザインとはいえ、KIWAMIより表示されるキーボードの横幅は微妙に狭くなりました。なので正直、自分の指によるタッチ操作でのかなキー入力は精度が落ちた気がします。

KIWAMIで「nicoWnnG IME」のソフトウェアキーボードを表示させたときの様子

Galaxy Note8で「nicoWnnG IME」のソフトウェアキーボードを表示させた時の様子。微妙にだがキーサイズが小さくなった

ただ、Galaxy Note8にはペンが付属しているので、これを使えば入力しづらいことはありません。ピンポイントでしっかりとソフトウェアキーボードのキーを押していくことができます。

まあ、スマホで長文を打つ機会はそれほどないのですが、そんなときはペンを使うことにしました。やはり、ソフトウェアキーボードのキーを指タッチで使うことまでを考えると、縦持ち時の画面サイズの横幅はもう少しほしかった気がします。

さて、ペンの話が出てきたので、ペンの使い勝手にも触れたいと思います。

これは、予想外に使いやすくて気に入っています。自分にしかわからないような手書きのメモをとる際に便利なのです。

というのもGalaxy Note8では、本体底面からペンを抜くと、それに連動してペン入力関連のアプリのランチャーが起動するのです。

ボクがもっぱら便利に使っているのは標準ソフトの「Galaxy Notes」という手書きメモアプリです。

紙の手帳代わりに殴り書きするようなメモを取るのに便利なGalaxy Note8の標準アプリ「Galaxy Notes」

テキストデータ化できるわけでもなく、ただ書き殴ったメモが取れるだけのアプリですが、とにかくスピーディーにメモが取れるので紙の手帳感覚で使えるのが気に入っています。

少し前までのスマホでの手書きペン入力は遅延がありすぎて、ユーザーが動かしたペンの軌跡と、これに追従して画面に描かれる線分の軌跡が違いすぎて興ざめなことが多かったのですが、Galaxy Note8ではメインプロセッサの性能が高い恩恵もあって、かなり低遅延で追従性がいいです。

画数の多い漢字もしっかり書けます。ほぼ「紙の手帳の代わり」として使えるようになっているかと思います。

筆者のGalaxy Notes一覧。なんだかほとんど「ストリートファイターV」のプレイメモになっているような……

ボクは、取材時には紙の手帳にメモを取ることも多かったのですが、Galaxy Note8になってからは、これでメモを取ることも増えてきましたね。

バッテリーの持ちについては、まずまずといったところです。

映像再生や音響機能を積極活用するとバッテリーの消耗が早いですが、普段使いでは、1日以上は持つことが多いです。

バッテリー容量は3,300mAhで、最近の大画面スマホとしては標準的な容量ですが、新しい機種なので、省電力制御が優秀なんでしょうね。

Galaxy Note 8でVRを楽しむ!?

今回のスマホ選びで、Galaxy Note8にした理由の1つに、VR対応があります。

Galaxy Note8は、VR対応ソリューションとして、サムスン純正のGearVRとGoogle謹製のDaydream Viewがあり、VR対応については全方位に優れています。

ボクはCG技術などを専門にしていることもあり、仕事柄、VR技術にも触れる機会が多く、ここは外せない要素でした。

日本では長らく、Daydream Viewの入手性が芳しくありませんでしたが、2017年12月になり、突如として日本語のDaydream View公式オンライン購入サイトも立ち上がったことで状況が変わりました。

第一世代のDaydream Viewは2016年末にリリースされたわけですが、第二世代のDaydream Viewは、Galaxy Note8への正式対応を謳いつつ、2017年末から発売が開始されたのです。

ちょうど、ボクがGalaxy Note8の入手タイミングと重なったこともあって、Galaxy Note8の購入とほぼ同時に新版Daydream Viewを手に入れました。

実際にボクが手に入れた新版Daydream View

ちなみに、新版(第二世代)Daydream Viewは、今回のボクのスマホ購入候補として上げていたLGのV30系にも対応していますし、ASUS ZenFone AR、Motorola Moto Z系、HuaweiのMate 9系などにも対応しています。

なお、詳細な対応機種リストはDaydream Viewの公式サイトを参照してください。

「スマホ向けのVRコンテンツなんてそんなにないでしょ?」というツッコミがありそうですが、最近はそんなこともないのです。

ゲームでは、2016年に世界各国でベストVRゲーム賞を受賞した『Rez Infinite』が2017年12月にDaydream View向けにリリースされました。

Rez Infiniteは、ハイテンションなエレクトリックダンスミュージックにシンクロして、レトロでサイケデリックな3Dグラフィックスが360°全方位に展開する3Dシューティングゲームです。

この作品は最初、ソニーのPlayStation VR(PSVR)向けにリリースされて話題を呼びましたが、スマホ版(Daydream View版)になっても、PSVR版とほぼ同体験が楽しめるようになっていて感動的です。

ゲーム好きならば、これだけのためにDaydream Viewを買ってもいいくらいです。

PSVR版でやっていた踊るようなプレイも、PSVRより軽量なDaydream Viewならばやりやすいですしね。

Rez InfiniteがついにスマホVRでプレイできるようになった。Daydream Viewユーザー必携のVRゲームだ!

Daydream Viewでは専用コントローラーが付属し、Rez Infiniteではこれを使って敵をレーザーで攻撃する。Oculus RiftやHTC VIVEなどに付属する専用コントローラーに及ばないものの、Rez Infiniteのゲームメカニクスではこれでじゅうぶんプレイできる

もう1つは、2月に韓国の平昌で開催された2018年冬季オリンピックです。

実は今回の冬季オリンピックはインテルの技術協力でかなり多くの競技がVR放送されていたのをご存じでしたか?

そう、Daydream Viewを使ったスマホベースのVRソリューションで、オリンピック競技を実写系の360°VRコンテンツとして楽しめたのです。

インテルは「True VR」と呼ばれるVR放送技術を推進していて、今回は、1眼あたり4K解像度のカメラを総計12基、180°の円弧状のフレームに組み付けた「True VRカメラ」と呼ばれる装置を競技場の各所に配置して、競技の模様をVRでリアルタイム配信していたのです。

このTrue VRカメラは1基で前後左右180°+αの画角の撮影をカバーし、このTrue VRカメラを背中合わせに配置すると前後左右360°の画角がカバーされる仕組みです。

ラスベガスで1月に開催された家電ショー、CES2018でも公開されたインテルが開発した「True VRカメラ」

このTrue VRカメラは、12基の4Kカメラを2眼ずつペアとして3D立体視撮影する仕組みだったため、今回、撮影・配信された映像は360°立体視に対応していたのが特徴です。

一般的な市販の360°カメラの映像は単眼撮影されたものなので、平面視ですからね。迫力が違うというわけです。

日本では、この放送をNHKが担当していました。

現在でも競技の様子を360°(ないしは180°)撮影した実写VR映像がアーカイブで提供されているので、興味のある人はNHKの特設サイトをチェックして見てください。

平昌冬季オリンピックの閉会式もVR生放送された。この画面は、まさにDaydream Viewでその配信を楽しんでいる最中の画面をキャプチャしたもの

スキーやスノーボードといったアクロバティックな競技の映像はもちろんですが、日本国内でもかなり盛り上がったカーリングの様子も面白いです。

テレビでは簡単そうにも見えるカーリングですが、VR映像で見ると競技場の広さや長さに驚かされます。金メダルを獲得したフィギュアスケートの羽生結弦選手の採点を待つ姿もVR映像に残っていますよ!

Daydream Viewで平昌冬季オリンピックのライブラリVRコンテンツを楽しむ筆者

おわりに

というわけで、2017年末……というか2018年から、ボクのスマホはGalaxy Note8になりました。

最新になったことで、これまでは(KIWAMIでは)手を出しづらかった、新しい技術やアプリ、ソリューションに手を出していけそうです。

ゲームも含めて、このスマホで体験できる何か新しいことに遭遇した時には、この連載でカバーしていきたいと思っています。

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