三国志ものがたり【ゲームレビュー】

パズルで戦うドットキャラクターとのバトルと、豪華声優陣が出演するボイスのノベルを組み合わせた新機軸のRPG『三国志ものがたり』。ファンから高く評価されているパズルゲーム『古の女神と宝石の射手』のスタッフが開発を手掛けており、ゲームとしての出来栄えは折り紙付きだ。ストーリーのテーマは「王の苦悩」。重厚かつ感動あふれるストーリーを楽しもう。

サウンドやアートワークにも注目したいニューウェーブ三国志

吉川英治の小説や横山光輝によるコミックをきっかけに、本家である中国以上に一家言を持つ日本のファンが多い『三国志』。史書派と、羅漢中の記した小説『三国志演義』派と、大きく分けて2つの派閥があるが、人気コンテンツであるがゆえにさまざまな小説作品が数多く出版されており、漫画やゲームを含めるとまさに星の数ほどのラインアップとなっている。

登場する武将たちも、デフォルメされたり性別が変わったり、舞台が現代になって学園ものになったり、はたまたロボットだったりと多様な翻案が行われているが、この『三国志ものがたり』もそんな作品の1つである。

曹操が赤ずきんちゃんで、周瑜は羽織を身に着けた犬? かなり自由な発想で『三国志』の世界を表現している

むしろ原作を知らない方が楽しめるかも?

『三国志』の翻案ものというのは、武将の性別が変わろうが、舞台となる時代が変わろうが、一応原作を下敷きにするのが普通だ。しかし本作は、魏呉蜀の三国に所属するという要素くらいで、性格もエピソードもあまり原作をなぞっておらず、かなり大胆なアレンジが加えられている。

それは音楽や美術といった点でも同様で、いわゆる中華的な楽器の使用やメロディラインといった部分はなく、無国籍なプログレッシブ感でもなく、アメリカンな解釈をしているのが独特だ。

ユーザーインターフェイスからして、あまり中華風ではない。文字周りや色使い、アイコンなど、かなりポップなアメリカンスタイルなのがおわかりいただけるだろう

武将に関しては、いわゆる中華風な甲冑姿の武将がいると思えば、性別が女性に転換されているものや人ですらないものなど、実にフリーダム。世界観も西洋風の城塞都市が登場するなど、一般的な『三国志』の世界をイメージしているとかなり面食らう。

これは『三国志』に詳しい人ほど陥るワナだろうから、あまり先入観なく遊んだほうがこの世界に早くなじめるだろう。ちなみに、本作で構成された物語に破たんがあるわけではないので、最初の『三国志』らしさとのギャップさえ乗り越えてしまえば、あとはスムーズに楽しむことができるはずだ。

出演声優陣

  • 劉備玄徳:代永翼
  • 諸葛亮孔明:沢城みゆき
  • 曹操孟徳:花澤香菜
  • 夏侯惇元譲:楠大典
  • 趙雲子龍:野島裕史
  • 孫権仲謀:沢城千春
  • 周瑜公瑾:八代拓
  • 関羽雲長:武内駿輔
  • 張飛翼徳:遠藤ゆりか

物語はクエスト中に差し挟まれることはなく、まったく別個の読み物となっており、かなりのボリュームが用意されている。途中で挿絵が表示されるなど、まるでライトノベルの趣だ。スピーカーアイコンをタップすると、そのセリフを各武将の担当声優が読み上げてくれるというシステムも面白い

戦闘はパズル形式

各武将には4つの属性のいずれかが付加されており、戦闘時はこの属性に対応するパネルを消すことで攻撃を行う。パネルは2つ以上をつなげれば消すことができるが、上下左右、斜めのいずれかが接していればつなげられる。一筆書きで、より多く消すことができれば、その分だけ対応する武将の攻撃回数が増すので、強力な攻撃を繰り出せる。

また、同色パネルの4つが四角形に並んでいれば、これをなぞることで同色を一気に消すことができる。なお、消したパネルに対応する武将がいない場合は、パネルをつなげても攻撃が行われないことに注意しよう。

4つの属性は火、風、土、水で、前者が後者に対して有利となるが、これをフルに活用してしないと効果的にダメージを与えられないというバランスになっている。ちなみに、一度の攻撃でなぞることができる回数は3回である。

一度パネルをなぞり始めると、5秒間という時間制限が発生する。これに追われてあわてると消し漏らしが発生するので、慎重に操作しよう

ガチャの排出はかなり渋めだが……

パーティーを強化するためには、まずは武将を手に入れなければならない。一部、ストーリーの進展で手に入るものもあるが、武将の入手頻度はかなり低く、無課金のアイテムで引けるガチャも用意されていない。また、課金通貨である水晶を使って引くユニットガチャは、無課金ガチャが無いためにレアリティーの足切りがなく、かなり広い範囲のレアリティーの武将がランダムに排出される仕組みだ。

武将のレアリティーは星5までだが、ガチャからも普通に星2くらいの低レアリティー武将が排出される。水晶は1つ10円ほどで、30個でガチャを1回引くことができるため、レートとしてはほかのスマホゲームとそう変わらない。なるべく多くの水晶をためて、11連ガチャに望みを託すのがよさそうだ。

ユニットガチャから排出された「ゴブリン」。『三国志』なのにゴブリンがいる世界だというのはわかったが、もうちょっと強いキャラがほしかった……

レアリティの違いによって、パラメータの差だけでなく成長限界も異なっている。星1ならレベル5まで、星5ならレベル50まで成長させることが可能だ

改善すべき点は目につくが独特な魅力を持つ作品

現在、公式情報としてアナウンスされているが、一部端末で強制終了が起きやすい現象が確認されているようだ。残念ながら、筆者の端末もこれに該当していたため、戦闘中にゲームが落ちてしまうことが多かった。戦闘中の場合は、その戦闘を最初からやり直さねばならず、強い助っ人や理想的なパネル配置をせっかく手にできたとしても、やり直しになるとこれらがすべて無に帰してしまうのがつらかった。

ロード時間も長く、ゲームの落ちやすさと相まって非常にストレスとなった(ちなみに、ロード完了時に落ちることも多い)。まずはゲームの安定性に関連する不具合の改善をしてもらいつつ、ロード時間に関しても一考していただけるとありがたい。

物語は『三国志』の武将が登場するものの、べースになっているのは中世ヨーロッパ風の騎士が登場する世界観なので、そういった心づもりで遊んでもらいたい。圧倒的なテキスト量や、メインキャストのボイスを担当する豪華な声優陣など、物語に没入できる要素は非常に多い。世界観が肌に合えば、一気に面白くなること請け合いだ。

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 9.2
  • プレイ時間:約4時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0.0
  • 課金総額:0円

Copyright (C) Copan, Inc. All Rights Reserved.