Age of Empires: Castle Siege【ゲームレビュー】

リアルタイムストラテジーというゲームジャンルを代表する人気シリーズ『Age of Empires』の最新作は、iOS/Android向けの『Age of Empires: Castle Siege』だ。その独特なゲームシステムを3つのポイントに絞って、『AoE』シリーズを知り尽くしたベテランライターが解説!

世界的知名度の『Age of Empires』シリーズがより手軽になった

1997年に第1作が発売されて以来、『Age of Empires』シリーズはリアルタイムストラテジー(RTS)というゲームジャンルを代表する作品として多くのPCゲーマーに親しまれている。「ストラテジー(戦略)」という言葉がジャンル名に含まれる理由は、一時的な戦局や戦場、戦術を競うゲームではなく、内政や国土建設などを含めた「戦略的なゲームプレイ」が求められる点にある。これにより、プレイヤーは膨大な選択肢の中から幅広いプレイスタイルを取ることができるのだ。そしてRTSは、プロゲーマーによる世界大会でも競技種目として採用され、人気および知名度においては世界的な規模を誇っている。

今回紹介する『Age of Empires: Castle Siege』は、『AoE』の名を冠してはいるものの、従来のシリーズとは異なるゲームデザインが施されている。未開の大陸を開拓する部分は省かれ、そのゲーム設定や世界観を利用した、箱庭的な地域での局地戦を楽しむゲームなのだ。これは、画面サイズや操作デバイスに制限のないPCではなく、スマートフォンのゲームアプリケーションとしての成り立ちから、より手軽に楽しめるように『AoE』シリーズのエッセンスを取り込んでいることが理由のようだ。

若干デフォルメされたメインビジュアルだが、ゲームの内容は本格派だ

ゲームで扱われるテーマは文明の興亡

そのエッセンスの第1として、「歴史的な文明の再現」が挙げられる。本作で選択可能な文明は、ブリトン、フランク、チュートン騎士団、キエフ大公国、ビザンツ帝国、サラセンの6種類で、それぞれ文明的な特徴として特別なユニットを有している。ユニットとは、プレイヤーが直接に移動や行動を指示できる将棋やチェスの駒のようなものだ。

選択する文明は、世界史でもおなじみのヨーロッパを中心とした歴史的な国家、または集団となる。ゲームに慣れていない最初は、好みで選んでもいい

一例を挙げると、ブリトンの特別ユニット「エドワード黒太子」であれば、特殊能力「粉砕」で、1つの建物に強大なダメージを与えることができる。選択した文明によって、このような特殊ユニットが4種類ずつ設定されており、ゲームを有利にも不利にもする(例えば、先ほどの「粉砕」は建物には非常に有効だが、人型のユニットには無効であるため、人型ユニットに特効がある別のユニットとの直接対決では不利になる)。また、ゲーム中であっても文明を変更することが可能なので、自分の好みやプレイスタイルだけでなく、対戦する相手に応じて不利にならないような対抗策を講じることができる。

文明の再現は、特別ユニットだけではなく「蛮族の時代」から世代的な発展をトレースしている点でも行われている。本作は、「文明の興亡」を題材とした歴史シミュレーションでもあるのだ。

それぞれの文明には4つの特別なユニットが設定されている。対戦をする際には、どの文明の特殊ユニットがどんな能力を持つか、事前に把握しておく必要がある

こちらは戦闘画面。ユニット数の少ない小規模なバトルだが、たくさんのユニットがちょこまかと動くのを眺めるのも楽しい

資源と時間を有効に使うリアルタイムストラテジー

第2のエッセンスとして、RTSならではの「時間と資源の運用」がある。プレイヤーは箱庭のような領地にさまざまな施設を建設し、自らの文明の発展を促していく。これらの施設には、資源として木材を生産する「材木場」などがあり、この施設がなければ木材は得られない。材木場を建設するためには食糧(資源)が必要で、一定の食糧を消費することで建設が開始される。

箱庭のようなマップ上に自分の文明の施設を建設し、資源や取得や部隊ユニットの編成を行う。部隊ユニット編成には、兵舎などのユニットを作り出す施設が必要だ

建設は即時に完了させることも可能だが、通常は何十秒かの時間を要する。また建設完了後も時間を掛けて木材を産出するため、一気に大量の木材が得られることはない。この資源の回収速度を上げるためには、さらに材木場を建設するか、材木場をアップグレードする必要がある。もちろん、そのための追加資源も時間も必要だ。

このように資源と時間の消費を計算し、間断なく文明を発展させていくところが本作の妙味である。資源にばかり気を取られて軍事を疎かにすれば、たちまち敵対する勢力に滅ぼされてしまう。石斧しか持たない軍事ユニットでは、装甲のある騎馬兵には太刀打ちできないのだから、文化面での進歩も重要である。文明は進歩するので、いつまでも石器時代の軍隊では対抗できなくなる。資源と時間をバランスよくコントロールし、敵襲を退けつつ、文明を発展させ、編成した軍を派遣することで他の文明を滅ぼしていく。こういった微細な計算の積み重ねこそが、自らの文明を世界の覇者として君臨させるのだ。

部隊ユニットの編成は、画面左下の部隊アイコンでも可能。適応している施設があれば、箱庭上の施設を選ばなくとも編成可能な舞台を選択して編成できる

画面右下にある「市場アイコン」を操作すると、ゲーム上で得られた資源を使って、軍、経済、防衛などの建物を建設できる。略奪は課金によるゴールドの購入で、課金によりゲームを有利に進めることも可能だ

オンライン対戦ゲームとしてのソーシャル機能に注目

第3のエッセンスとして、「他のプレイヤーとの対戦」がある。ゲームアプリをダウンロード・インストールした際に作成したアカウント情報をもとにプレイヤーとしてのアカウントが登録されるが、Xbox Liveアカウントに関連付けを行うと、Xbox Liveアカウント上の実績やゲームスコアも獲得できるようになる。他のプレイヤーとフレンド登録をするなどのソーシャル機能ばかりか、プレイヤー同士で組織されている同盟に参加することも可能だ。

あとは相手プレイヤーを検索して対戦するわけだが、最初は公式サイトに登録されている対戦動画を確認したり、参加した同盟の他のプレイヤーの対戦を参照したりして、戦い方を学ぶことから始めた方がいいだろう。本作では全世界のプレイヤーと対戦できるため、自ずとプレイヤーのレベルも高くなっている。もちろん、AIを相手に疑似対戦で練習するのもいいだろう。

ソーシャル機能としては同盟やフレンド機能以外にも、ランキングのチェックやゲームの進捗を確認できる実績機能もある

できれば大画面で楽しみたい本格的ゲーム

このように本作は、スマートフォン対応のゲームアプリケーションとしてはかなり本格的なゲーム要素があり、遊び応えは十分だ。『AoE』というシリーズ名が冠せられてはいるが、そのゲーム性は別物であり、後継作というよりはスピンオフと考えたほうがいいだろう。

ただし、本作をスマートフォンでプレイしようとすると、画面サイズに制約があるためか、文字の大きさやボタン操作に戸惑うかもしれない。日本語にローカライズされてはいるもののスマートフォンでは拡大レンズを使わなければ判別できないほど文字が小さく、指先より小さなアイコンの左右の米粒サイズのボタンを「戦局に応じてリアルタイムに操作」しなければならないのは、ちょっとした問題だ。画面に集中してプレイするゲーム性なので、外出先で気軽に遊ぶとなるとなかなか難しいだろう。大きな画面サイズのタブレットでなら問題ないが、できればWindows 10に対応したPCで、大型ディスプレイで展開する歴史絵巻を楽しみたい本格的なゲームだ。

  • 使用した端末機種:iPhone 5s
  • OSのバージョン:iOS 8.3
  • プレイ時間:3時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.8
  • 課金総額:0円