『ファイアーエムブレム ヒーローズ』実機プレイでわかったゲームシステム
1990年に第1作『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』が発売されて以来、多くのファンを魅了してきた『ファイアーエムブレム』シリーズ。
数多くの仲間たちとともに主人公が成長していくストーリーと、少しずつ積み重ねていく決断の数々から生まれる奥深い戦略が、その大いなる特徴となっている。
今回の体験プレイの合間には、任天堂の松下慎吾氏、インテリジェントシステムズの前田耕平氏から貴重なお話をうかがうこともできた。
バトルは見た目のシンプルさ以上に奥深い!
『ファイアーエムブレム ヒーローズ』のバトルは8×6マスのマップで展開。プレイヤーは召喚士となり、最大4人の英雄を率いて敵と対決する。
移動および攻撃はタップまたはスワイプでOKだ。操作自体もかなりスムーズで、まったくストレスなくゲームを進めることができた。
敵を攻撃する、あるいは敵から攻撃されるとバトル画面に移行。互いに攻撃を行ってダメージを与え合う。場合によっては反撃で大ダメージを食らってしまうこともあるので、注意が必要だ。
また、英雄たちはそれぞれ4つの属性のいずれかを持つ。赤は緑に強く、緑は青に強く、青は赤に強いという関係になっており、敵の属性に合わせて編成を変えていくという戦略性が生まれてくる。
同じマップでも移動タイプの違いでより複雑な構造に
――これまでのシリーズ作と比べて、作り方として違う部分はありましたか?
前田耕平氏(以下、前田):スマートフォンに合った『ファイアーエムブレム』にしたいということで、5分とか10分で手軽に、1つの画面で遊べることを重視しました。
いっぽうで、『ファイアーエムブレム』ならではの戦略性やゲーム的な面白さも維持したいと思っていました。敵も味方もいろんなスキルを持つことで多彩な戦略をとることができます。
――1つの画面にすべての要素を盛り込むということで、レベルデザインに手を焼かれたのでは?
松下慎吾氏(以下、松下):今回は初めて触れられる方も多いだろうという想定のもと、大胆に行こうと考え、とにかくマップを小さくしようと決めました。
最初はもっと小さかったんです。でも、もうちょっと増やしましょう(笑)という話をしつつ、今のサイズに落着きました。
マップを狭くしたので、もうちょっと作成が楽に早くできるかと思ったのですが、全然そんなことはなかったですね(笑)。
――マップが狭い分、それぞれに変化をつけるのが難しかったのでは?
前田:地形や配置のバリエーションはいろいろなものが用意できたと考えています。加えて、キャラが持つスキルによってさらに多彩な変化が生まれました。
――パーティーの最大人数は何人になりますか?
前田:基本的には、一軍メンバーは4人です。マップによっては、必要なキャラクターを入れ替えていくという形になります。
――移動の際に障害となる、壁のようなギミックもあるようですね。
前田:そういったものもあります。あとは、飛行ユニットは弓に弱いといった相性の要素もあります。
――マップ上に山がありますが、飛行ユニットはこれを飛び越えられるのでしょうか?
前田:はい。また騎馬ユニットはたくさん動ける(3マス)けれども、森に入ることができません。兵種によって一長一短があります。
松下:地形のルールは過去作とちょっと変わっていますので、地形と兵種の組み合わせで行動が変わってくるのが面白いですよ。
マップが狭いので「単純なゲームなんじゃ?」と想像されるかもしれませんが、英雄が増えればその分だけ戦略も増えるので、楽しみ方はもっと増えてくると思います。
前田:飛行ユニットは弓に弱いといった相性もありますが、移動タイプの違いもあります。飛行、重装、騎馬、歩行などがシステム的な違いで、武器種の違いと組み合わせると、全部で30種類近くのユニットタイプが存在することになります。
マップによって勝利条件を変えていますが、初心者の方なら「おまかせ」でプレイするのもありですね。おまかせで、クリアできなかったマップがクリアできることもあると思います。
――初期状態で保持できるキャラクター数は?
松下:デフォルトで200人です。最初は20人で設計していたのですが、さすがに枠が足りないと。すぐにいっぱいになってしまうので、50でも足りませんでした。
英雄召喚ではランダムで表示される属性が選択可能!
ゲームのホーム画面は城の広間のようになっており、所持している英雄たちがここで待機している姿を確認できる。
また広間には、フレンドとなったプレイヤーのリーダーが遊びに来てくれることもある。その際にはハートマークが付く確率が高くなっているという。
ここで注目したいのが、広間の「模様替え」だ。ゲームプレイを通じて入手したり、課金でも購入できる「オーブ」を消費して装飾を変更すると、同時に「入手経験値のアップ」という効果を永久に得ることができる。
後から加入した英雄の育成が楽になるのはもちろん、模様替えを最大限まで行って、最初からキャラクターの育成をブーストするという手段もある。スタートダッシュを決めたい人は要チェックだ。
英雄を増やすには、スペシャルマップの「英雄戦」で戦った相手を倒して仲間にする方法と、「英雄召喚」といういわゆるガチャを回す方法がある。
英雄召喚はタイミングによってラインナップが異なることもあり、続々と新しい英雄が追加されていく予定だ。
また英雄召喚は1人ずつ獲得する方式となっているが、その際には5つの属性がランダムで表示され、その中から1つを選択してオープンするという仕組みになっている。
表示される属性の組み合わせはランダムで、すべての属性がまんべんなく出現することもあれば、どれか1つにかたよって出現することもある。
狙っている英雄がいる人や、特定の属性の英雄を補充したいと考えている人は、これを利用してある程度狙って新たな英雄を手に入れることが可能だ。
なお、同じ星の数の英雄であれば、一長一短はあるものの、どれも同等の強さになっているという。
最終的にはすべての英雄が星5まで育成できるので、これまでのシリーズのお気に入りの英雄を集中して育てていくもよし、自分のパーティーで中心になって活躍してくれそうな英雄をどんどん強化していくのもよしだ。
武器や防具といった概念はスキルに集約!
――ホーム画面の模様替えは何種類ですか?
前田:初期は1種類ですが、城を購入すると次第に豪華になっていきます。最大6種類まで増やすことができます。
模様替えを行うと入手経験値がかなり増えるので、かなりお得です。
松下:早いうちから上げておけば、育成が楽になるかもしれません。
最初は杖ユニットのレベルが上げにくいので、これをやっておくとすごく楽になります。レベルを上げて、スキルを覚えて……。
今回は杖ユニットも敵を攻撃できるんですが、スキルは回復と攻撃の両方の効果があります。どちらも強化すれば、大変な強キャラになりますよ。
――戦闘で失ったキャラはどうなりますか?
前田:そのステージが終われば復活します
――これまでのシリーズ作のように、死んだら終わりということにはならないと。
前田:その点について、どうしようかという話もありました。
松下:けっこう議論があったのですが、今作では英雄召喚に必要なオーブはお金をお支払いいただくことでも入手できるようになっていますし、死んでしまったらそれきりというのはダメだろうと。
ニンテンドーDSの『新・紋章の謎』からカジュアルモードを追加している歴史もあり、「今回は生き返るようにしよう」ということになりました。
前田:皆さんはキャラクターに対してすごく思い入れがあると思うので、このようなシステムにしました。スマホだとリセットもできないですからね。
――『ファイアーエムブレム』といえば敵が容赦ない攻撃をしてくるイメージがあるのですが、そのあたりは今までどおりですか?
前田:基本的な敵の動きは、今までどおりに近くなっています。慣れていない方は、レベルアップなどで強くしていただければ突破できるはずです。
また、シミュレーションや戦略性が好きという方のためには、高難易度のマップを用意しています。そういったマップは非常に難しいし、敵同士がスキルを駆使して連携してこちらの英雄を倒しに来ます。
――ある意味、ワクワクします(笑)
前田:「大英雄戦」と呼ばれる特別なマップの最高難易度などは本当に難しくて、最強キャラを4人そろえたらクリアできるというものでもないです。敵に合ったスキルとか戦略が求められます。
松下:敵がコンビネーションで攻めてくるのは、意外と今までのゲームでは少ないのではないでしょうか。
前田:今作ではスキルの重要性が特に高くなっています。敵もそういったスキルを使ってくるので、特に高い難易度では、こちらを苦しめてきます。
松下:武器とか防具という概念がスキルに集約されているので、そのチョイスが大事ですね。
常に効果を発揮するパッシブスキルなどもあるので、そこをどう組み上げていくかみたいな、プレイヤーの方次第なのかなと思います
前田:マップ上で味方を引っ張って移動させたりするスキルもありますよ。逆に、体当たりで1マス押し出すとか。
松下:今作は、かなり移動力が制限されているので、そういったスキルをうまく使うと戦術の幅がすごく広がるはずです。
敵もそれを使ってきたりして……、一歩踏み込んだら奥へ引き込まれて倒されるとか(笑)。
今回は、たとえば原作では回復役に徹していたリフなど、表立って戦闘向きではなかったキャラクターにも専用スキルがありますし、育てれば強くなりますので、活躍させることができます。
前田:スキルを獲得するにはSP(スキルポイント)が必要になりますが、スキル習得メニューからスキルチェンジができます。
SPは各キャラクターがレベルアップもしくは敵を倒したときに獲得できます。
――英雄召喚は、狙ったキャラが獲得しやすくなる面白いシステムですね。
松下:英雄召喚のバリエーションは、そのときによって追加で増やしたり、イベントに合わせて入れ替えたりする予定です。
基本的には、新しいキャラクターは追加されたタイミングで当たりやすい設定にするつもりです。
――後から手に入れたキャラクターの育成は、どのように進めるのでしょうか?
前田:バトルにつれていって戦闘させるほか、経験値素材(結晶)を消費することでレベルを一気に上げられます
――補助スキルについて、特定のキャラの組み合わせで違うということはありますか?
前田:キャラクターごとに決まった効果が得られる仕組みで、組み合わせなどで変化することはありません
――以前あったマイユニットのような仕組みは?
前田:今作ではプレイヤーがユニットとして登場することはありませんが、『烈火の剣』であった軍師のような形で、戦闘には参加しないものの、仲間たちと交流することができます。
新規登場キャラクター
アルフォンス(オリジナルキャラクター)
シャロン(オリジナルキャラクター)
ヴェロニカ(オリジナルキャラクター)
アンナ(オリジナルキャラクター)
謎の男(オリジナルキャラクター)
歴代の英雄たち
マルス(ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣・紋章の謎)
チキ(ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣・紋章の謎)
ロイ(ファイアーエムブレム 封印の剣)
リン(ファイアーエムブレム 烈火の剣)
ルキナ(ファイアーエムブレム 覚醒)
ルフレ(ファイアーエムブレム 覚醒)
タクミ(ファイアーエムブレム if)
ほかにもさまざまな英雄たちが登場!
ストーリーの追加は月2回くらいのペースで
――想定されているユーザー層はどのあたりでしょうか?
松下:最初は、過去作を遊んでくれているファンの方を念頭に置いていました。
スマートフォンということで、これまで『ファイアーエムブレム』シリーズを遊んだことがないという方や、「名前は知っているけれど……」といったユーザーの方たちにも知っていただければと思っています。
基本プレイ無料ですので、まずは遊んでみていただきたいと考えています。
過去にファミコンやスーパーファミコンで遊んでいたなという方はもちろん、今まで『ファイアーエムブレムシリーズ』を遊んだことない方、最近の『ファイアーエムブレム』は遊んだことがあるけど昔のシリーズは知らない、という若い年齢層の方にも触れていただきたいですね。
そのため、今作に登場する英雄たちは、幅広い年代で採用させてもらっています。
――スマートフォンのシミュレーションRPGでは「これ」というタイトルがあまりないと思うのですが、これくらい高い完成度であれば、新しいジャンルとして受け入れてもらえるかもしれませんね。
前田:シミュレーションRPG自体がマイナーなんじゃないかという不安もありますが(笑)、スマホで多くの方に遊んでもらえる機会になればいいなと思っています。
――ストーリーの背景については?
松下:ストーリーの設定的には、大きく2つの国があって、その対立を描いています。
前田:これまでとの大きな違いとして、過去シリーズの英雄たちを召喚するというものになっていて、敵側にも同様に過去シリーズのキャラクターが登場し、英雄たち同士がぶつかり合う展開がメインとなっています。
もちろん、マルスが敵になるといったこともありますよ。
英雄たち同士がぶつかり合う展開がメインとなっていますが、マルスが敵になるといったこともありますよ。
――ストーリーを進めるのは、いわゆるスタミナ制なんですね。
松下:スタミナはシステムからなくすことも検討していたんですが、プレイのリズムがつけやすいので、あったほうがいいのかなと。
週末に集中して遊びたいという人に向けて、週末ログインボーナスも用意しています。ミッションなどでスタミナ回復券がもらえるのですが、それをある程度ストックできるように作っています。
これをためておいてもらって、まとめて遊びたいときに使ってもらえればと。プレイヤーの皆さんが自分のリズムで遊べるように工夫しています。
――発表から配信まであまり間がありませんでしたが、開発期間はどれくらいですか?
松下: 2015年の5月か6月くらいから、およそ2年近くです。
前田:社内ではスマートデバイスで作りたいという意見がけっこう前からあって、研究は進めていました。それを含めるともっと長い期間ということになりますが(笑)
松下:そのためか、プロトタイプができたのは割と早かったですね。スマホゲームは初めてなので、コンシューマで作るのとは違って、ケアしないといけない部分が多かったんです。
そういったところをきれいに整えていくといった対応に、時間が掛かった印象です
―アップデートの頻度はどれくらいの期間を見込んでいますか?
松下:コンテンツ配信(ストーリー)は月2回くらいを計画しています。機能の追加などの大きめの更新は、最初は頑張って毎月やりたいですね。やりたいことは、まだまだたくさんあるので(笑)。
ユーザーの方にプレーンな状態で楽しんでいただいた後に、機能を増やしたほうがいいだろうと感じています。それ以降はまだ作っているので、頑張ります(笑)。
――リリース時のストーリーのボリュームは、どれくらいになりますか?
前田:本編のストーリーという意味では、だいたい50マップくらいです。難易度別で、それぞれ3種類がプレイできます。
ノーマルをクリアするとハードがプレイ可能にといった具合です。
――過去の12作品から英雄たちが登場しますが、リリース時には何人が登場しますか?
前田:約100人名です。
―過去作にあったような支援会話はありますか?
前田:キャラクター同士のものはありません。その代わり、プレイヤーとキャラクターの触れ合い、タッチしたときに話しかける感じでメッセージを楽しめます。
また、そのキャラクターを特に強くした場合には、そのキャラとの間に特別な絆が生まれてスペシャルイベントが発生します。
――アカウント連携については?
松下:データの引継ぎという形式ではなく、アカウント連携をすることで複数の端末で並行してプレイすることができます。同時起動は不可ですが、iOS/Androidを問わず、家ではタブレット、外出先ではスマホなどの使い分けが可能です。
ちなみに、タブレットでは表示される範囲が広いので、スマホではイラストの見えない部分も確認することができます。解像度も十分高いので、きれいにくっきりと見えはずです。
――非常にテンポよくプレイできるのが印象に残りました。
松下:そこはプログラマー陣がこだわってくれました。驚異的にデータのローディングを早くするという、その意識が高いスタッフが多いんです。
前田:キャラクターイラストについては、普通ではお願いできないようなベテランイラストレーターの方にも協力していただけました。ポーズにもバリエーションがありますので、ぜひ注目していただきたいと思います。
――音に対するこだわりはいかがですか? スマホだとまったく聞かずにプレイする人も少なくないと思います。
前田:それは社内でも議論になりましたね。サウンドディレクターはコンシューマの『覚醒』や『if』でもメインを務めた森下さんです。
スマートフォンに合った形、短い時間でも満足していただけるようなキャッチーな音作りでサウンドを制作してくれました。
あとはボイスですね。今まで声のなかったキャラクターを含め、すべての英雄にボイスが付いています。そういった面でも楽しんでいただければ。
――それでは、本作に期待するファンの方にメッセージをお願いします。
松下:今回登場していない英雄や作品もありますが、決して忘れていません(笑)。きちんとケアしていきますので、楽しみにしていてください。
ゲームの機能も随時追加していきたいと考えていますが、そういった部分にひもづいたキャラクターも出てくると思います。
そういった機能拡張を伴うキャラクターは時間が掛かるかもしれませんが、ちゃんと増やしていくことはお約束します。
なるべくご期待に沿えるような形でやっていきたいと考えているので、応援をよろしくお願いします。
――本日はありがとうございました。
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