LLRanger【ゲームレビュー】

『LLRanger』は、さらわれた子ヒツジたちをオオカミから取り戻すため、赤と青の仕切りを動かしながらステージを突破していく迷路&アクションパズル。厳しい時間制限の中で、瞬時に活路を見出せるかが攻略のポイントとなっている。開発を手掛けたコトは、元任天堂の故横井軍平氏によって設立された会社で、新たなデジタル技術やホビー商品の開発にも取り組んでいる。

ファンシーな見た目に反してかなりハードなパズルゲーム

時間制限付きのパズルゲームはアーケードゲームが主流だったころのトレンド。それというのも、投入されたクレジットに対して回転率を考慮しないといけなかったから。つまり、買い切りとなる家庭用ゲームの場合は、時間制限はプレイアビリティーを損なうものだし、回転率も考慮する必要がないので、次第に数を減らしていった。

もちろん、時間経過がスコアに連動するタイプのゲームはあるが、緊張を絶えず強いられてしまうのは、プレイヤーにとっても落ち着かないものである。しかし本作は、そんな昨今のトレンドに反するように、時間制限+強制スクロールという方法を選択している。

迫りくる炎の壁と、先の見えないステージ構成。瞬時の判断が生死を分けるピーキーな作りが、8ビットマシン時代のタイトルを思わせる

尻に火がつく焦燥感

固定あるいは強制スクロールするステージを進み、ゴールを目指すパズルゲームなのだが、行く手にはL字型をした赤と青のブロックが立ちはだかっている。周囲に障害物がなければ、これを動かして新たな進路を切り開くことが可能だ。また、逆向きになった2つのブロックを正方形に組み合わせれば、スコアアップするコインなどのアイテムが出現するという実にシンプルなゲームシステムとなっている。

しかし、これがまた実に嫌らしいつくりをしているのだ。画面固定のステージではタイマーがどんどん減っていき、タイマーがなくなると画面下部から炎が迫ってくる。そして、強制スクロールのステージなら最初から最後まで、常に炎が自分の後を追ってくる。ただ、強制スクロールのステージでは自分が先に進むだけでなく、途中で救出しなければならない子ヒツジたちがマップに配置されている。自分か、子ヒツジたちが炎に焼かれると即ゲームオーバーだ。

青いブロックと赤いブロックを組み合わせると灰色のブロックに変化。コインなどのアイテムが手に入るようになるが、こうなると動かすことはできないし、中にオブジェクトを閉じ込めてしまうと、見えているアイテムと子ヒツジをすべて回収する「マグネット」を使うしか手がなくなる

ブロックを組み合わせて得られるアイテムは3種類。「コイン」はスコアアップに影響する(テーマの購入は別)。「壺」は複数個のコインを入手できるボーナスアイテム。また「マグネット」は、画面上にあるオブジェクトを一気に回収することができる

なんとも絶妙の難易度

固定ステージではタイマー減少がかなり早く、うかうかしているとすぐに炎が現れる。それでも、ステージ上のL字ブロックの位置は変わらないので、数回もプレイすれば、攻略法が見つかるはず。しかし、スクロールステージはオブジェクトとL字ブロックの位置がプレイするたびに変わるので、覚えて解くということができない。

これが実に困りもので、序盤も序盤のステージ5から先に進めず、閉口した。スクロール速度があと1割ほど遅ければ、あるいは見えている範囲が1割も広ければずいぶん楽になるのだが、ここら辺のさじ加減がコアゲーマー向けに振られていて、開発チームから突き付けられたガチの挑戦状に思えてならなかった。

つまり、最近はちょっとぬるめのゲームにどっぷりで、筆者もすっかり鈍っていたというわけだ。大いに反省するところではあるが、マップを瞬時に解析して的確に操作するというのは、なかなかにしんどい。ブロック移動というギミックも、マップが下端から消滅していくので、気がついたときにはすでに手遅れになっているということも頻繁に起こる。さらに、ちょっとした操作ミスが取り返しのつかない結果を招くこともある。

スクロールステージの場合のみだが、子ヒツジが炎に焼かれそうになると100コイン使用してマグネットを呼び出し、緊急回避を行うことができる

テーマを変更して世界観を一新できるのだが……

ステージセレクト画面はシンプルなもので、選択できるステージとテーマの2種類しかボタンがない。このテーマだが、各1,000コインで「SAMURAI」や「NINJA」といったテーマを購入できる。このコイン集めがまたひと苦労で、ゲームプレイが無料かつ課金要素もない作品なので仕方ないともいえるが、広告を見ないと手に入れることができない。ちなみに最大で100コイン、最小で10コインである。

実際にテーマを購入するまでは、SAMURAIやNINJAといったキャラクターを選択できるようになれば、壁抜けとか、壁の破壊などの特殊スキルが使えるようになって、ちょっとはプレイが楽になるのではないか……と期待していたのだが、購入してみればステージのテーマが変わるだけだった。まったくもってウソ偽りはないのだが、この肩透かし感たるや(ううむ)。

自分のキャラをSAMURAIに変えると、ブロックが塀になり、回収オブジェクトが城になる。見た目は変わるが、ゲームシステムは何ら変わらない

難易度設定があるとなおよかった

スクロールステージはランダム配置であることから、面の構成と解きやすさもランダムで、先の面に進むほど難度が上がるといった要素はないようだ。逆に、詰まった面の次からはサクサク進むといったことも起こる。そういう意味で、運の要素が強いように思える。

回収するオブジェクトを少なくするなどの難易度設定があるとよかったのだが、残念ながら1モードのみである。ベースとなるシステムに瑕疵はなく、操作感も悪くないのだが、開始から数ステージで本気全開となるのは、ゲームの継続プレイを断念させるファクターとなりうるだろう。

また、ステージ内で回収できるコインはスコアに作用するだけで、テーマの購入や緊急避難に使えないというのも混乱する。せめて、ほかのアイコンになっていればよかったのだが。バランス調整もゲーム制作の大事な要素のはずだが、ここの部分が若干うまく処理できていない印象を受けたのが残念だ。

オブジェクトを誤って閉じ込めてしまった際に、アイテム使用などで一手戻るなどの救済策があれば、なおよかったのだが

1980年代のゲームへの回帰願望は、PSG音源風のBGMとSEからも感じ取ることができたが、あの当時の不親切さまで再現されてしまっている。お助けアイテムの追加など、さらなる拡張の余地はまだあるので、この先のアップデートなどの展開に期待したいところである。

  • 使用した端末機種:iPhone 6 Plus
  • OSのバージョン:iOS 9.0.2
  • プレイ時間:約6時間
  • 記事作成時のゲームのバージョン:1.0
  • 課金総額:0円

(C) 2015 KOTO Co.,Ltd.