中国製スマホゲーム『アズールレーン』にむしろヲタ文化の世界への広がりを見る

先日来、無課金ながらしばらく『アズールレーン』をやっていて、せめて赤城でもドロップせんかなあと思いながら3-4を巡回しております。や、楽しいですね、このスマホゲーム。

自分の身の回りでは、4年ほど前に一世を風靡した『艦隊これくしょん(艦これ)』のテーマがパクリだとか、思ったような艦艇娘のイラストじゃないとか避難批判も多く見られます。

もっとも、今からでも『艦これ』アプリでもきちんとした仕様で出せば話題になると思いますし、むしろこの完成度でしっかり仕上げてきた『アズールレーン』が日本に上陸した、そして相応にヒットしているというのは、ゲームを作る側も衝撃を受けるでしょうし、刺激にもなると思うんですよね。

作風としての中華臭さというのはそれほどなく、きちんと洗練されたアプリになっている分、日本も中国もヲタの文化差や技量、受け取り方、萌えのポイントみたいなものはかなり互換的だと感じる部分はあります。

中国国内の市場でも、顔が幼女で身体がエロければポージングとアクセント次第でどうとでもシコれる、みたいな言い方もされているようですし、敵艦隊で日本の艦艇が出ていてそれが日本人という設定で仲間になるとまずいので、耳を生やしてあれは獣であり人外だからそのような扱いでもよいのだ、という政治的なバックグラウンドはどうしても拭い去れないものはあります。この辺、むずかしいもんです。

昔、名作PCシミュレーションゲーム『ハーツオブアイアン(HoI)』シリーズで、大日本帝国の昭和天皇をゲーム内に出すにあたり、文化的に不適切だということで海外では「ヒロヒト」であったものが日本正規版では「大本営」にされていたのを思い出します。

「どのようなモチーフでも美少女にすればいい」というのは安易なようで、キャラを量産してそこにレア度をつけて課金で稼ぐスマホゲームとの相性がいいというのもポイントなんでしょうが、ヲタ向け作品についてはかなり日本と中国の嗜好が似てきた、エロキャラ(性的表現)には国境はないのだということを改めて感じる次第です。

本編ゲーム自体は、シューティングと言いつつ、わざと作りは非常に甘く作っていて、自動進行しても大きく不利がないよう、ある程度被弾前提で作ってあります。

「さあ、勝ちたければレベルを上げて強化しろ。早く強化して先を見たければ金を払うのだ」という定番の仕様が盛り込まれており、ここでも日本のスマホゲームをきちんと研究した上で、中国の大きな市場でどんどん試した結果、日本以上に洗練されてきたな中華ゲーム、って感じがします。

ゲーム業界全体で見れば、いい刺激というか危機感を持たないと日本発祥を自負するヲタゲーすらも中国に抜き去られ日本市場を席巻されかねないというのは気にしていいと思います。

何しろゲームとしてのバランスは、ドロップさえすればひととおりキャラは無課金でも揃うかたわら、むしろ艦娘のレア度よりも載せる装備のクオリティや強化が大事だったり、後半になると燃料がきついので、むしろレア度の低い平凡な艦娘のレベルと装備だけ強化して、巡回は極力燃料をセーブして回数を稼ぐというプレイングが求められます。

本末転倒というか、キャラやクラス、レア度の強さゆえにリソースを使うシステムであれば当然そうならざるを得ないので、本当に極めようとするとけっこう大変です。

新しいシナリオも7章、8章と出てきましたけど、この手のゲームではどうしても避けられないインフレと仕様増えすぎで、ガチ勢とリーマン勢の差は開く一方です。売れているタイミングでアニメ化したりラノベ出したりという器用さもまだないようなので、どうやって今後プレイヤーを繋ぎ止めていこうとするのか、非常に気になりますね。

先日、IT mediaで青柳美帆子さんが中華ゲームの健闘をまとめておられましたが、ここに日本特有のビジネスマインドも注ぎ込まれると、大変なことになるんじゃないかとすら思います。

もっとも、同じく中華ゲームで『崩壊3rd』や『陰陽師』を見ていると、単体のアクションゲームとしての『崩壊3rd』は「おい、ほんとこんなんでいいのか」と思うレベルで雑ですし(スマホだから遠くからの攻撃が見えなくていいという、エクスキューズができるほどでもない)、この『アズールレーン』もシューティングゲームとしてはいけていないのです。

でも、それでいいのです、スマホゲームという市場を見るならば。本格的なゲームでやりこんで優劣を競うというプレイングをしたい人はPCゲームでも据え置き機でも買って大作をプレイすればいい、といういい意味での割り切りがしっかりできているように思います。

逆に、日本で爆死してしまうテンプレ系スマホゲームは、最近では本当に数ヵ月ももたずにサービス終了になってしまうぐらいの激戦で、開発費と広告宣伝費であれだけお金をかけておきながらこれかよという事例が増える中で、「このゲームは誰にどういう風に遊ばせるテーマの作品なのか」をいま以上に考える必要が出てきた、と言えるでしょう。

単純に中国すげーとか日本やべえという話ではなく、そもそも何がいいと思って遊んでるんだっけ、誰向けに作ってるゲームなんだっけ、というのは各社も各クリエイターも一度クールダウンして考えながら取り組んだほうがいいんじゃないか、と感じました。

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