ネコの絵描きさんがダブル受賞!チーム名の由来にもビックリ!【Indie Games Festival 2018】

「Indie Game Festival 2018」ファイナルイベントの模様をお届け。個性豊かな作品に輪をかけたバラエティーに富んだプレゼンテーションを勝ち抜き、トップ3に輝いたゲームとは?

選び抜かれたインディーゲームトップ3が決定

「Indie Game Festival 2018」ファイナルイベントでは、2017年1月1日以降にGoogle Playで配信されたインディーゲームの中から、ユーザーと審査員の審査によりトップ3までが絞り込まれた。

ファイナルイベントの午後からは、午前中の来場者投票によって選ばれたトップ10のゲームの製作者によるプレゼンテーションが行われた。

MCを務めるのはひげおやじ氏。氏が右手に持っているのが来場者がゲームに対して採点をするのに使ったチェッカーだ

トップ10ゲーム

  • 怪異掲示板と7つのウワサ – 完全無料のチャットノベルゲーム/Entabridge Co., Ltd.
  • Million Onion Hotel 〜ミリオンオニオンホテル〜/Onion Games K.K.
  • クリスタル・クラッシュ【超攻撃的パズル合戦!】/Cold Fusion, Inc.
  • BQM – ブロッククエスト・メーカー/Wonderland Kazakiri inc.
  • ネコの絵描きさん/waken
  • Craft Warriors/Translimit, Inc
  • ねぇAI、本当の事がしりたい/Kotoriyama, Inc.
  • Ninja Flicker/東京工業大学デジタル創作同好会traP
  • PARADE!/内田達也
  • ねこかわいい ぼくゆうれい/HARAPECORPORATION Inc.

審査員

  • 細野修平/集英社 第3編集部 少年ジャンプ+編集長
  • 安藤武博/シシララ代表取締役・ゲームDJ
  • 川島優志/Niantic アジア統括本部長 兼 エグゼクティブプロデューサー
  • カイロくん/カイロソフト プログラマー 兼 アイデアマン
  • キズナアイ/バーチャル YouTuber
  • 中畑虎也/SELECT BUTTON Director
  • 林克彦/Gzブレイン 週刊ファミ通編集部 編集人・編集長
  • Chongsa Kim/ Head of Japan Games Business Development, Google Play
  • Hyunse Chang/Partner Development Manager, Google Play Games
  • Sarah Thomson/BD Lead, Indie Games, Google Play
  • 松田白朗/Developer Advocate, Google LLC.

プレゼンテーションでは、製作者が壇上に上がり、自身のゲームの魅力を会場に向けてアピールする。

チームによって、ゲームへの情熱や開発のきっかけなどパッション溢れるものから、愉快な掛け合いで会場を盛り上げるチームまで、その内容は多彩

夫を元気付けるために妻が描いたイラストからスタートしたと開発秘話が語られた『ねぇAI、本当の事がしりたい』や、ゲームが苦手だったという過去を告白し、独自の視点をゲームに落とし込んだ『ねこかわいい ぼくゆうれい』など、インディーゲームならではのエピソードも語られた

白熱のプレゼンテーションの結果、トップ3と「少年ジャンプ+」の細野編集長が選ぶジャンプ+賞が決定した。

それぞれ、豪華賞品だけでなく、トップ3はGoogle Playの、ジャンプ+賞は少年ジャンプ+のバックアップが約束され、より大きな舞台での活躍が期待される。

トップ3

  • Craft Warriors
  • PARADE!
  • ネコの絵描きさん

ジャンプ+賞

  • ネコの絵描きさん

ここでは、受賞を果たした3作品のプレゼンテーションを振り返ろう。

Craft Warriors

『Craft Warriors』の発表では、キャラクターメイクの自由度の高さをアピール。

登壇したのは開発を行ったトランスリミットの高場大樹氏

『Minecraft』のヒットから、キューブ状のキャラクターを使ったカスタマイズ性の高いゲームは世界的に人気がある。

デモ映像では、ドロイド君とキズナアイを模したキャラクターが登場。手足の骨に沿っていれば、好きにキャラクターを作成できる

作ったキャラクターのデザインを売り買いできるコミュニティ性の高さも注目で、ユーザーの90%は海外というグローバル展開を意識した作り込みも審査員から高い評価を受けていた。

PARADE!

『PARADE!』の作者である内田達也氏は、まず最初に「音楽、楽しんでいますか?」と会場に問いかける。

製作者の内田氏。『PARADE!』は、内田氏がほぼひとりで作ったという

内田氏は、台湾のクラブで多くの人が盛り上がる……俗にいう「ブチ上がる」映像を紹介し、この熱狂をゲームで表現したかったと開発のきっかけを語る。

そのため、内田氏がとったのは流れてくるノーツを叩くという従来の視覚に頼っていた部分を離れ、耳で音を聞いて体で覚えるというアプローチだった。

動物たちが次々と後ろに続く愉快な見た目など、ユーザーのテンションをあげる試みも会場では高い評価を受けていた。

目隠しをされたり、カメラワークが変わったりと、耳でゲームを遊ばせるための試みがスタイリッシュに決まっているという点も好評だった

ネコの絵描きさん

会場の雰囲気を一気に掴み、見事ダブル受賞を果たした『ネコの絵描きさん』。プレゼンテーションでは、開発をおこなったNukeninが登壇。

プレゼンテーションを行ったのは、Nukeninの渡部健(わけん)氏

チーム名の由来は、メンバーの全員が元任天堂社員ということと「抜け忍」とかけたネーミングだと挨拶し、会場の空気をつかみ、スムーズにゲームの内容を解説に繋げた

プレイヤーは、絵描きであると同時に他のプレイヤーの描いた絵を評価する採点者という仕組みにより、Instagramなどに通じる関係性を遊びに昇華している。

このシステムは、絵が上手い人はもちろん、苦手な人も楽しめるもので、むしろ絵が苦手だからこそ盛り上がる楽しさがそこにある。

実際に投稿された絵の例を紹介しながら、会場を巻き込んで、絵のお題を客席に聞くゲームも行われた。1枚目の答えは「えんしんりょく」、2枚目は「れーざーびーむ」。これだけでも会場が大きく盛り上がるのでゲーム本編ならなおさらだろう

シンプルながら、自然とゲームが楽しくなっていく仕組みは、会場や審査員からも大好評。Nukeninの名の通り、ゲームに任天堂の思想が息づいているのを感じた。

アナログゲームには『テレストレーション』や『ピクトグラム』のような、描き手とレビュワーを兼ねるゲームは散見されるが、ゲームアプリなら世界中の人と遊べる。

この無限に近い広がりの可能性が、会場と審査員のハートをがっちりつかみ、見事トップ3とジャンプ賞のダブル受賞を果たした。

トップ20まで入ったゲームはいずれも、自身の思う「ゲームの楽しさ」を見事に形にした作品ばかり。トップ3に入ったゲームは、海外展開も約束されている

審査員がインディーゲームから受けた刺激と希望

イベント終了後、審査員を務めた安藤氏と川島氏から、今回のイベントや作品についてコメントをいただくことができた。

安藤武博氏

「シシララTV」などでゲームDJとして、ゲームの楽しさを伝える仕事をしている安藤氏だが、元はゲーム開発者としての顔も持っている

――審査員を務めた感想をお願いします。

安藤氏:どの作品も選ぶのは大変で、3つに絞るのは酷なくらい、どの作品も充実したラインナップでした。

今回の出展作品を見て、「面白さ」をゴールにすることで、ゲームデザインは大きく進化すると改めて強く感じました。

ビジネスをゴールにしたゲームは、マネタイズによってゲームデザインが停滞していた側面があったなと自戒の念を覚えました。

――安藤さんが、個人的に気になったゲームがあれば教えてください。

安藤氏:プレゼンテーションでは『ねぇAI、本当の事がしりたい』の夫婦のエピソードに感動しました。

また、『ねこかわいい ぼくゆうれい』はUIやデザイン、タイトルのゆるさなど、作者がゲーマーではないからこそ出てくる意外性に満点でした。

――インディーゲームメーカーに求めるものはありますか?

安藤氏:インディーの魅力は、遊ぶまでどんなゲームなのかわからないという点にもあると思います。

また、大手メーカーの場合、収益のノルマが厳しかったりと好きなものが作れないもどかしさもあると思います。

なので、インディーゲームメーカーには、良い意味で想像を裏切るびっくり箱のようなゲームを目指し続けて欲しいです。

川島優志氏

『Ingress』や『ポケモンGO』で知られるNianticのアジア統括本部長。日本だけでなく海外展開も意識した視点で審査にのぞんだ

――もっとも気に入った作品はどれでしょうか?

1番は『ネコの絵描きさん』でした。絵を通して、シンプルに遊べることでどんな人でも一緒に遊べるゲームだと思い、海外への展開にも可能性を感じました。

また、どのゲームもプレゼンテーションが素晴らしかったのですが、『ねぇAI、本当の事がしりたい』は、夫婦の出来事をゲームを通して他の人にも体験してもらいたいという思いがこもっていました。

楽しさを求めるということも重要ですが、このような思いをもったゲームもインディーゲームならではだと思いました。

――『PARADE!』のプレゼンテーションの際に、ゲームと音の関係に注目しているとコメントされていましたが、どのような点に注目しているのでしょうか?

普段生活していて、最近の都会の人は「耳をすます」ことが無くなっているなと常に感じていました。

ノイズキャンセリングされた環境にいますが、耳をすますと周囲には色々な音が溢れているということに気づかされると思います。

このように、目だけではなく様々な感覚を使ったデバイスがどんどん登場しています。

Nianticでは、現在は目で遊ぶ拡張現実を提供していますが、耳で遊べる拡張現実も作れないかなと刺激を受けています。

(C) 2018 Google